中毒(INTENSIVIST VOL.9NO.3)の重要項目まとめ

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目次

1. 【初療におけるアプローチ】
2. 【トキシドローム】
3. 【消化管除染のエビデンス】
4. 【中毒各論】

 

 

 

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INTENSIVIST 重要項目まとめ

 

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【1. 初療におけるアプローチ】
・救急隊からの情報に、薬物過剰摂取歴や毒物摂取歴が含まれていないケースがある。
・つまり、原因不明の症候(ショック、意識障害、痙攣)に対する評価及びprimary surveyによるABCDEの評価を行わなければならない。
・意識障害の鑑別疾患であるAIUEO TIPSにもToxicやOverdoseなどが含まれている。

A. 気道
・気道を確保しなければ、患者はすぐに死ぬ。
・気道閉塞は、
・声が出せない
・陥没呼吸
・努力性呼吸
などをもとに判断
・気道閉塞の場合には、迷わず経口気管挿管を選択

 

B. 呼吸
・視診、聴診、打診、触診の五感を利用した診察が基本となる。
・SpO2モニターは酸素化の指標となるが、CO中毒ではCOHbに反応して高い値をとることに注意。
→CO中毒では、SpO2が高くても呼吸不全を否定できない。

 

<拮抗薬投与のタイミング>
・AまたはBの異常が見られた場合には、気管挿管のよる気道確保を考慮するが、オピオイド中毒患者に対しては、ナロキソンの投与により挿管を回避しうる。
・ベンゾジアゼピンに対してフルマゼニルによる拮抗は有害事象が有意に増加することから積極的には推奨されない。特に三環系抗うつ薬の同時内服下では痙攣を誘発する。

 

<Rapid Sequence Intubation>
・前酸素化
迅速導入では患者の意識消失から気管挿管終了までの時間を短縮するため、静脈麻酔薬と筋弛緩薬は間をおかず投与される。この一連の流れによっても無呼吸の時間は30秒程度になると考えらえる。喉頭展開や気管挿管に手間取った場合、無呼吸の時間は容易に60-90秒を超える。この間、動脈血酸素分圧を安全な範囲に保つためには、麻酔導入前の酸素化が重要な意味を持つ。3-5分の通常換気量あるいは、それには劣るが1分間に8回の深呼吸による酸素化で挿管に備える。

・筋弛緩薬非投与下でも、レミフェンタニルとプロポフォールを使えば挿管は可能だが、嗄声や声帯のびらんなどの合併症を引き起こすリスクが高くなることから、筋弛緩薬投与可能な状況であれば、使用が推奨される。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/28/4/28_4_590/_pdf/-char/ja


http://www.med.nihon-u.ac.jp/department/eccm/study/2014/mawatari_20140623.pdf

①フェンタニルは効果発現に時間がかかるため、前酸素化の間に投与。
②リドカインもフェンタニルと同時に投与。
③同じタイミングで軽く輪状軟骨圧迫も開始。
④前酸素化が終わったら、鎮静剤と筋弛緩薬を一気に連続的に投与。
→前もって同じシリンジに混和しておいてもよい。
→必ず後押しフラッシュを行って、チューブ死腔分の時間ロスを防ぐ。
⑤フラッシュ後、1分後に挿管する。意識消失が得られているこの間は強く輪状軟骨圧迫
→1分間の間は、十分な前酸素化が行われていれば酸素化は低下しないので、原則マスク換気は行わない
→万が一落ちてくる場合には、20mmHgでマスク換気。
⑥挿管後、カフ注入を終えてから輪状軟骨圧迫を解除。

 

・挿管困難な解剖、無呼吸耐容能が低い、血圧低下などを呈する場合には、意識下挿管の適応となる。
→アスピリン、メタノール、エチレングリコール中毒などの重度のアシドーシス患者に対しては、わずかな呼吸停止が代償不全をきたし、アシデミアの急激な進行から心停止につながる可能性があることから、意識下挿管が適応となり得る。

 

C. 循環
・循環不全の結果としても意識障害が起きる。
→皮膚の冷感がないか、橈骨動脈が触れるかどうか(sBP 80mmHg)、頻脈かどうか
CRT2秒以上であれば末梢循環不全
・収縮期血圧90mmHgであればショック状態である。
・循環不全が示唆される場合には。腹腔内や心臓をエコーで確認のうえ、晶質液の投与を開始する。
・昇圧はノルアドレナリンで行う。
・ショックによる意識障害・不穏があると判断すれば、この時点で気道確保目的に気管挿管を行う方が安全である。
・β遮断、Ca拮抗薬、ジゴキシンの中毒では徐脈・低血圧が同時に起きる
・薬物中毒や離脱症状による頻脈・高血圧に対してはBDZ系が第一選択となる。

<心電図>
・中毒診療においては特にQRS延長、QT延長に注意する。
→男性440msec, 女性460msec
→500msecを超えると有意に不整脈が増加し、最終的にはVT/VFに至る

・torsade de pointesを起こした場合には、まずマグネシウムを投与する
→Mgの2gボーラス投与、必要であれば3-20mg/minの持続投与
→それでもだめなら心拍数100/minを目標にβ遮断(ランジオロール)の投与。リドカインはエビデンスなし。虚血ベースでは効く可能性あり。
→それでもだめならDC

 

D. 中枢神経
・低血糖の除外から始めるのが大原則。
・慢性アルコール中毒や低栄養状態が示唆される場合にはビタミンB1を投与

・coma cocktail(ビタミンB1、ブドウ糖、ナロキソン、フルマゼニルの同時投与)は現在では推奨されない。
・てんかん発作に対しては、ショックや低血糖がないことを確認したうえで、発作のコントロールを行う。
→中毒に伴うてんかん発作は大部分が自然収束するが、第一選択はセルシンの投与となる。
→重責状態となりセルシンが無効の場合には、ミダゾラム・プロポフォールを投与。
・切迫するDがあれば、primary survey終了時に頭部CTを撮影する。
・頭蓋内占拠性病変は緊急手術を考慮する。

 

E. 体表・体温管理
・原因不明の症候を呈する患者の診療において、体表の肉眼的所見は非常に重要で、脱衣と全身観察を行う。
・自傷痕や注射痕の発見は診断の助けとなる。
・また薬物中毒では低体温/高体温のどちらも起きうる。
→セロトニン中毒、悪性症候群で高体温となる。

 

その他
・AMPLEに準じた病歴聴取
(Allergy, Medication, Past medial history/Pregnancy, Last meal, Event)
・周囲の者からの病歴聴取
→化学物質・薬物への曝露
→空PTPやアルコールの空き缶、麻薬関連の道具の有無
・精神疾患の既往や治療歴や積極的に聴取。本人の申告は実施と異なる場合があることに注意。

 

 

 

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【2.トキシドローム】
・中毒診療では、原因物質の同定は非常に重要であるにも関わらず、特定できないケースがある。
・バイタルサインや身体所見、症状、血液検査の所見や心電図所見を組み合わせて中毒物質を推定することが可能なのがトキシドローム(toxic+syndrome)という概念である。
・トキシドロームにより原因物質の種類を同定できれば、一般的に同種の薬物に対する治療は同様であることが多いため、薬物自体の同定は必要ない。
・トキシドロームに含まれる薬物の種類は
①抗コリン性
②コリン作動性
③交感神経興奮性
④鎮静薬・催眠薬
⑤オピオイド
があるので、以下に各論的に述べていく。

 

①抗コリン性トキシドローム
a. 病態
・副交感神経に主に存在するムスカリン受容体を阻害する
→眼、心臓、呼吸器、皮膚、胃腸、膀胱に影響をもつ。
→散瞳・羞明、発汗抑制・高体温、頻拍・血圧上昇、尿閉、腸蠕動低下、嘔気・嘔吐を呈する。
→ムスカリン受容体は汗腺だけには、交感神経系に働く。
→抗コリン作用による発汗抑制・皮膚乾燥は交感神経興奮性トキシドロームとの鑑別に重要。

b. 代表的な薬物
アトロピン、ブスコパン、抗ヒスタミン薬、抗パーキンソン薬、抗精神病薬、三環系抗うつ薬

c. 治療
・ネオスチグミン(コリンエステラーゼ阻害剤)の投与
→ただし、大量の気道分泌や痙攣、徐脈などのコリン作動性クリーゼを起こす可能性があり注意
・不穏に対してはBDZを使用
・血液浄化療法の適応はなs

 

②コリン作動性トキシドローム
a. 病態
・ムスカリン受容体・ニコチン受容体を活性化することで、ほぼ全ての臓器に症状を呈する。
・縮瞳、嘔吐、気管支攣縮・気道分泌過多・咳嗽・喘鳴、徐脈・低血圧、下痢・排尿、弛緩性痙攣重責
→特に呼吸器症状が劇的であり、主な死因となる。

b. 代表的な薬物
有機リン、カーバメート系農薬、ニコチンなど

c. 治療
・アトロピン(ムスカリン受容体拮抗薬)
→2-4mgを静脈内or筋肉内投与
→症状が改善するまで5分毎に繰り返す。

 

③交感神経興奮性トキシドローム
a. 病態
・中枢神経系の興奮(不穏、不安、振戦)、散瞳、頻脈、高血圧、痙攣、高体温、発汗
→抗コリン性トキシドロームとの鑑別には大量発汗が重要

b. 代表的な薬物
・コカイン、覚せい剤、エフェドリン、MAO阻害薬
・BDZの離脱症状として交換新規絵興奮作用を呈することがある。

c. 治療
・BDZの投与が第一選択
→β遮断薬は心灌流の悪化を呈することから使用しない。

 

④鎮静・催眠薬トキシドローム
a. 病態
・鎮静・催眠薬の一部やエタノールは中枢神経にあるGABA受容体に結合し細胞の興奮を抑制させる。
・意識レベルの低下、呼吸抑制、血圧低下、消化管平滑筋の運動抑制、低体温などをきたす

b. 代表的な薬物
・BDZ、ゾルピデム・ゾピクロン・エスゾピクロン、バルビツール、アルコール

c. 治療
・支持療法が中心となる。
・理論的にはフルマゼニルによる拮抗が有効と考えられるが、痙攣の可能性やBDZ離脱の誘因となることから、積極的には使用しない

 

⑤オピオイド系トキシドローム
a. 病態
・μ、κ、δ受容体に作用することで、鎮痛・鎮静・多幸感をもたらす
・重篤な症状は、中枢神経抑制・呼吸抑制・縮瞳
→最も一般的な死亡原因は呼吸抑制
→また、中枢神経抑制による昏睡から、圧挫症候群・横紋筋融解症、誤嚥性肺炎に至る
・それ以外にも、便秘、血圧低下、徐脈を起こす。

b. 代表的な薬物
・ヘロイン、フェンタニル、オキシコドン、トラマドール、ぺチジン
→ぺチジン、フェンタニル、トラマドールはセロトニン作用があることから、他のセロトニン作動薬との併用でセロトニン症候群を呈する可能性がある。

c. 治療
・ナロキソンで拮抗可能であり、昏睡状態の患者の症状、所見および既往があれば投与すべきである。
→静脈内、筋肉、骨髄、舌下、気管に投与可能
→半減期がオピオイドよりも短いことから、中毒症状は治療後も再燃し、反復/持続投与が必要となる。

 

 

 

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【3.消化管除染のエビデンス】
・経口摂取したものについては、吸収されずに消化管内に残っていれば直接的に排除が可能である。
→方法としては、嘔吐・胃洗浄・超線溶が挙げられる
→また吸収阻害として活性炭の投与、排出促進として下剤の使用されている。

 

[催吐]
・消化管を除染する単純な方法として嘔吐(用手的な催吐)が最も簡便な方法である。
→ただし、中毒という疾患の性質上(個体差なども含めて)、研究の実施が困難であり良質なエビデンスが存在しない。
→催吐薬の使用タイミングは摂取から30-90分以内がよいとされる
→禁忌(意識障害を含めて誤嚥のリスクが高い、有機溶剤や酸・アルカリ)がない場合で、かつ他に活性炭投与などの吸収を阻害する方法がない場合に考慮する。

 

[胃洗浄]
・60分以内に行うことが推奨され、遅れて行った場合には臨床的意義はないと言われている。
・禁忌
→頭蓋顔面損傷、頭部外傷、全身の損傷
→石油、酸アルカリ
→患者の協力が得られない。

・合併症
→近年、胃洗浄における利点よりも合併症の方が多く報告される。
→誤嚥性肺炎、不整脈、低血圧、食道胃穿孔

・胃洗浄が第一選択となっている中毒はない
→代わりに活性炭の投与や保存的加療を考慮する。

 

[活性炭]
・有効な物質
→カルバマゼピン、フェノバルビタール、テオフィリン
→無効:アルコール、アルカリ、鉄、リチウム、鉄など

・投与方法
→活性炭投与は、胃洗浄や緩下剤と併用するのではなく、単独で使用する。
→意識障害の患者には気道を確保してから。意識清明であれば、患者自身で経口摂取
→1g/kgで12.5g/hrを下回らない速度で投与
→繰り返し投与する場合には上記の量を4時間ごとに24時間が経つまで投与。

 

[腸洗浄]
・下剤投与により、水様便となり腸管での吸収率を低下させる。
・活性炭が使用できない、有効でない場合には摂取後2時間以内を目安に腸洗浄
・消化管穿孔、閉塞基点のある患者で禁忌となる。

 

 

 

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【4.中毒各論】
a. アセトアミノフェン
<総論>
・通常の最大用量は4000mg/day
・過量服用では用量依存性に肝細胞壊死が起きる
・24時間で10g以上の使用に対してはすぐさま救急外来の受診をすべき。
→頻回の嘔吐、右季肋部痛、意識変容を呈する。
→アルコール依存や飢餓状態では感受性が増す。

<治療>
ⅰ. 拮抗薬(NAC)
・血中濃度を測定して治療開始の基準とするが、本邦では測定が難しい施設が多い。
・投与方法はDIVとPOがあるが、国内にはPO製剤しかない。
→極力、曝露から8時間以内に。ただし24時間以内であれば効果はある。
→140mg/kgを初回経口投与。その後、70mg/kgを17回。計18回投与を行う。

ⅱ. 活性炭
アセトアミノフェン投与から2時間以内であれば効果が期待できる。

 

b. 循環作動薬
①ジゴキシン中毒
・治療域(0.5-2.0ng/mL)と中毒域(2.0ng/mL-)が近接していることから、通常の治療中に発生しうる。
→CCBやアミオダロンとの併用で注意
・症状
→消化器症状(悪心・嘔吐)、意識障害、心電図以上(PVC、VT、AVBを伴うAT)
・治療
→服用1-2時間でかつ症状が重篤な場合には活性炭投与を検討する
→徐脈、房室ブロックにはアトロピンの投与を行う。
→拮抗薬は日本未発売

②β遮断薬、Ca拮抗薬
→服用から1-2時間以内であれば活性炭投与を検討
→グルカゴン、カルシウム製剤、インスリン療法がとられ得る

<高用量インスリン療法>
→ニトログリセリン中毒にも使用可能
・BS<200mg/dlの場合は、50%ブドウ糖液50mLをIV ・インスリン0.5-1.0U/kgのloading dose ・1U/kg/hrのインスリンを持続投与 ・合わせて、10%ブドウ糖100mL/hrを同時投与 ・BS>100mg/dlに保つ
・臨床反応を見て10-15分おきに1-2U/kg/hrずつ増量する
・Kの補正を忘れない。

 

c. 向精神薬中毒
・過量服薬により致死性が高いのは三環系抗うつ薬や定型抗精神病薬である
→SSRI/SNRIや非定型抗精神病薬が主流とはいえ、定型精神病薬(ハロペリドールを除く)の効果が非定型に劣らないという研究結果があったり、と一定数の使用は残るものと考えらえる。

①三環系抗うつ薬(TCA)
・症状
→ムスカリン受容体の阻害により、抗コリン性トキシドローム症状
を引き起こす.
→痙攣もありうる。

・検査
心電図:PR,QRS,QT時間延長、心室性不整脈、房室ブロックに留意
血液:血液ガスによりpHのチェック、低Kのチェックを

・治療
→ABCの確保が基本。切迫するDでは挿管を含めた高度気道確保を考慮する。
→アシドーシスに対してはメイロン投与によりpH7.45-7.55程度のアルカリ化を行う
→治療効果を循環動態及び心電図異常所見からの回復で評価する。
→痙攣に対してはBZDの投与をして良い。頓挫しなければMDZやPRFを使う。
→内服1時間以内であれば活性炭の投与を考慮する

 

②SSRI
・症状
→大部分の患者は過量投与後も症状が軽度か無症状。
→悪心・嘔吐、鎮静作用。痙攣や昏睡は稀

・検査
血液検査:低Naに注意

・治療
→軽症であることがほとんどである。
→特異的な治療方法を必要としない。

<セロトニン中毒>
・SSRI単独の急性中毒ではそれほど頻度は高くないものの、セロトニン症状群となる可能性がある。
・自律神経障害、精神症状の変化、痙攣/筋硬直、高体温を呈する
→軽症では頻脈、高血圧、悪寒、散瞳など
・MDZによる鎮静で治療を行う
→加えてセロトニン受容体アンタゴニスト(シプロヘプタジン)を投与する。

 

③定型抗精神病薬
・クロルプロマジン
抗コリン性トキシドローム症状を呈する

・ハロペリドール
→急性錐体外路症状としてジストニア、アカシジア、パーキンソニズムを呈する。

<悪性症候群>
悪性症候群はせん妄や昏迷から昏睡までの意識変容を中心とした精神症状の変化、筋硬直、高体温、頻脈、血圧変動などの自律神経症状が特徴的である。
→セロトニン症候群との鑑別が困難となる。

・検査
心電図:QT延長をきたすことから、必須。増悪でTdPとなる。
血液:低Na(多飲、SIADHによる)

 

④非定型抗精神病薬
・多くは軽症~無症状
→傾眠や意識障害が起きうる
→興奮・譫妄、高血圧などの抗コリン症状が出現しうる。

・検査
心電図:QT延長に注意

・治療
特異的な治療方法はとくにない

 

⑤鎮静睡眠薬(BZDを中心に)
・症状
→意識レベルの低下、呼吸抑制が生じる
→単独中毒では致死的に張ることは稀である。
→バルビツレート中毒で昏睡となると、急性中毒の三大合併症(誤嚥性肺炎、異常体温、非外傷性圧挫症候群)を合併することがある。
→中毒時に逆説的に、奇異反応(攻撃的・脱抑制・不安・焦燥感)がみられることがある
→離脱症状として、不安・興奮・振戦・痙攣・知覚障害が起きる

・検査
→通常の中毒であれば鎮静・催眠薬トキシドローム症状
→離脱の際には交感神経興奮性トキシドローム症状

に準じた検査を行う。

・治療
→フルマゼニルは作用時間の短さから、たとえ拮抗したとしても再鎮静が起きうる。
→また痙攣を惹起することから推奨されない。
→奇異反応にのみ0.5mgを緩徐に静注する
→離脱症状に対してはジアゼパムの静注を行う。

 

⑥一酸化炭素
・血液中のHbと結合し、COHbを形成する。
・酸素の250倍の親和性を持つ。
→Hbの酸素運搬能低下により酸素供給量が低下、組織は低酸素症に陥る
→特に中枢神経と心筋が障害されやすい。
→脳浮腫に至る

・症状

・画像検査
→CTで両側淡蒼球の低吸収を示すことがある
→MRIでの大脳基底核、大脳白質・皮質、海馬、小脳に異常信号や脳浮腫を認める。
→曝露後早期のMRIで異常所見がある場合、遅発性脳症をきたす可能性が高い。

・神経学的後遺症
→急性中毒からいったん回復したのちに、2日-4週間の無症状期間を経て遅発性の精神・神経症状を呈するものを間歇型一酸化炭素中毒あるいは遅発性脳症(DNS)という
→意識障害、精神、神経症状、失禁、失行、人格変化、パーキンソニズムなど
→一酸化炭素中毒を罹患した患者のうち急性期のみに症状を認める患者が約70%、遅延型患者が20%、間歇型患者が10%と言われる。

・DNSの危険因子
→6時間以上の曝露、GCS9点未満など

・DNSの予後
→全体の60-70%は1-2年以内に回復する

・一酸化炭素中毒の心筋障害
→ミオグロビンと結合することによって、不整脈や心不全を呈する
→心電図異常を伴わずにトロポニンの上昇をきたすことがある
→心筋梗塞の発症も報告がある

・一酸化炭素中毒の治療
→6時間以上の酸素投与
→COHbが低くても、組織にCOが蓄積していることもあり、単純にCOHb濃度のみで重症度ならびに治療終了の判断をしてはいけない

→HBOの適応はHbCO>10%かつ有症状の症例が中心となる。
→曝露24時間以内の急性期にHBOを1-2時間、その後急性期の症状が固定されるまで数日間にわたって施行する施設が多い。
→装置を持たない施設では、10L/minの酸素投与6時間でも症状が改善しない場合には店員を考慮する。
→急性期CO中毒、心筋障害、DNSに対するHBOの効果については、明確なエビデンスに欠け、効果があるとする報告とないとする報告が入り乱れている。

 

 

川良健二

 

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