おわった、おわった、おわった・・・
試験終了直後おれの絶望感はさらに高められることとなった。
テストを回収する際に見えた前の人の答案用紙が真っ黒だったのだ。
あ、こいつ全問完答してやがる・・・・・・
いや、でもあってる保証はない。もしかしたら数学が難しかった可能性はまだ十分ある。
そう思ってる矢先であった。
後ろから、
「うん、数学で100点はとれたから、次は・・・・・・」
という声が聞こえてきたのだ。
医科歯科の数学は120点満点。
100点は2完半である。
それに対しおれは0完。
あって50点だろう。
後ろからの一言でおれはひどく動揺してしまった。
やっぱり今回簡単だったんだ、0完のおれがもうどうやったって無理だ。
もうやめようか。
頑張ってもどうせだめなんだから、もう頑張るのはやめようか。
それ以前に頑張る気力もなくなっちゃった・・・・・・
今まで成績はうなぎのぼりだった。
これはいけるんじゃないかという感覚は確かにあった、はずだった。
築きあげてきた自信が音を立てて崩れていくのがわかった。
藁にもすがる気持ちになっていった。
そこでふと思い出した。
高2から通っていた英語の塾の先生が、
東大を受けたけど1日目が全然できなくて意気消沈していた生徒から電話があって、その電話で激を飛ばしたら2日目でその生徒が挽回して合格したってことがあった、
って話をしていたのを思い出したのだ。
そうだ、その先生に電話しよう。
そう思い携帯をとりだしたが、なにかが電話することを拒んだ。
それはちっぽけなプライドだった。
それはさっき崩れ去ったはずの自信だった。
かっこ悪い。泣いて先生にすがるなんてかっこ悪すぎる。
こんなところで諦めるなんてかっこわるい。
散るならかっこよく散ろう。
全力じゃなかったから落ちた、なんて言い訳絶対したくなかった。
よし、大丈夫だ。
大丈夫、おれは一人でやっていける。
合格は難しいかもしれない。
だけど、最後までやりきるぐらいなら自分の気力でやってみせる。
どんどんと気持ちが高ぶってきた。
よし、数学で50点取れてると仮定しよう。
医科歯科の医学科の合格最低点は370点くらい。
おれはセンターで160点取っているから、二次で210点とればいい。
数学が50点なら物理・化学と英語で160点だ。
いける。
得意の物理で50点(60点満点)
苦手の化学で30点(60点満点)
英語でなんとか80点(120点満点)
とれば合格だ!
いける、まだ全然可能性はある。
粘ろう。最後まで粘り切ろう。
色々思考をめぐらせながら、事前に買ってきてあったおにぎりを2つ食べて来るべき物理・化学のテストに備える。
復習はまったくできなかったが、いいコンディションだ。
この気持ちなら合格がもぎとれるかもしれない。
さぁこい。物理で稼いでやる。
時間が来て、物理・化学の解答用紙、問題用紙が配られる。
いよいよ気持ちは高ぶる。
おれらしいじゃないか。
数学0完で奇跡の逆転合格。
おもしろい、やってやる。
いいシチュエーションがととのったな。
かかってこい!
「それでははじめてください」
さぁ、一発やってやるか。
もう数学のテスト直後の自分はどこにもいなかった。
続く。