東大SPHの1年間が終了したので、全ての授業の感想書くよ

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どうも、次郎作こと布施田泰之です。

2021年の4月に、東京大学の公衆衛生学修士(MPH)の大学院に入学して、

はや1年が経過しました。

 

これまで受けた授業の中で最高レベルに興味深い授業が続く毎日で、

「勉強できるって幸せ!」

と、とても充実した日々を過ごすことができました。

 

同時に、

今までにない視点をたくさん知り、

今まで意識もしたことのなかった世の中の課題を学んでいくと、

出口の見えない迷宮に迷い込んだような錯覚に襲われます。

 

結局、自分は何をすべきなのか。

これからゆっくり考えていきたいと思います。

 

それでは、本題の授業の感想にうつります。

 

前期(S1+S2ターム)の授業の感想は、こちら

 

A1ターム (2021/10/4~2021/11/26)

A2ターム (2021/11/29~2022/1/31)

時間割の画像です。

前期(Sターム)と比べて、圧倒的に授業数が減りました。

 

A1ターム (2021/10/4~2021/11/26)

月曜5時間目 ”健康医療政策学”

オススメ度:★★★★☆

医療政策に関わる、色々な先生方からのお話がオムニバス形式であって、聞いているだけでもとても面白い内容でした。

国立がんセンターの医療政策部の先生や、

東大SPHを卒業して医系技官として厚生労働省で働かれている先輩の話、

さらには日経新聞で社会保障分野のエディターをされている方の講義など、

多角的に医療政策についての講義が聞けました。

特に、SPH卒業生の先輩から厚生労働省の中での活躍をお聞きできたのは、とても貴重だったなと感じました。

 

火曜5時間目 ”精神保健学II”

オススメ度:★★★★☆

前期に他の授業とかぶっていたこともあって”精神保健学I”を受講しなかったのですが、それを後悔するくらいとても勉強になる授業でした。

産業保健の現場におけるメンタルヘルスが授業を通してのメインテーマで、時折グループディスカッションなどを交えながら授業は行われました。

個人的には、「ワーク・エンゲイジメント」「ジョブ・クラフティング」「CREWプログラム」などといったこれまで概念すら知らなかったキーワードについて講義を受けられたことや、

「中小企業での健康経営」についての実例などを知ることができて、とても面白かったです!

また、自分は聴講だったのですが、同期の方々のファイナルプレゼンテーションもみなさんの個性あふれる発表で聴かせていただいてとても刺激を受けました。

少しでも、産業保健やメンタルヘルスに興味がある方はぜひ受講すると良いと思いました!

 

火曜1-2時間目 ”産業保健の理論と実践”

オススメ度:★★★★☆

産業保健について、理論的な部分から実際に安全衛生委員会での提案についてなど実践的な部分まで網羅している、とても重厚感のある授業でした。

発がん性のリスク評価のプロセスや、実際に日本で問題になった実例などを勉強したり、

安全衛生委員会での実際の例を先生が実演する形で経験できたりと、

「予防医学の実践として、いずれ産業医として働いてみたいなぁ」

と思っていた僕としては、現場での実際の業務が垣間見ることができてとても勉強になりました。

最後の授業で行う学生同士の発表では、実際にあり得るような企業における課題文章が用意され、それについて4人ほどのグループで解決策を考えて、安全衛生委員会で提案する、という課題が課されました。

授業外でも何度か話し合わないといけないような重めな課題でしたが、資料を用意したり他のグループの発表を聞くことでかなり理解が深まったと感じました。

 

水曜3時間目 ”がん疫学”

聴講を数回させてもらったのですが、途中から参加できなくなってしまいました・・・

 

木曜1-2時間目 ”社会と健康I”

オススメ度:★★★★★

この授業を含めた橋本先生の授業では、これまでの統計学や疫学などのいわゆる理系的な話から一転して、

「健康に影響を及ぼす社会的要因(SDH)」などといった、社会と健康にまつわる学術的な背景や実際の現場でのあり方などを学びました。

“社会と健康I” では、その中でも現場で活躍されている方からの実践的な内容の授業が多かったです。

差別と健康との関連についてや、エイジズム、在日外国人における健康格差、ジェンダーギャップ、子ども食堂、認知症当事者ナレッジライブラリー、などなど、現場で取り組まれている方からの話が多くて、とても面白かったです!

東大SPHで個人的ヒットだった授業は、自身のツイッターで受講した直後に呟いてメモを残してきていたんですが、”社会と健康I”はツイート回数がトップでした。

初回の授業では、SDH(健康の社会的決定要因)が語られるようになったこれまでの医学の歴史や時代的背景、「疾病」自体の社会の中での捉えられ方の歴史などが取り上げられていて、

そちらも面白すぎて衝撃を受けたことを今も覚えています。

入学時点であまり興味がなくても、是非受講することをお勧めします!

 

木曜3-4時間目 ”臨床疫学・経済学演習”

オススメ度:★★★★★

ハンパないです。

おそらく今後の研究者生活へのお役立ち度で言ったら、この授業が東大SPHの中でトップだと思います。

特に、医師で臨床研究をやりたい方は絶対受けた方がいいです。

まず、3時間目では主に「医学論文の書き方」を教えていただきます。

Titleの書き方、Abstractの書き方、Introductionの書き方、Methods, Resultsの書き方、Discussionの書き方、論文のRevisionについて、Reviewer commentの書き方などについて、1つずつ授業で扱っていただきました。

「Abstractだけ消された論文」を読んで、自分でAbstractを書いてみたり、

Introductionの流れや構成を意識しながら実際の論文のIntroductionを想像して書いてみたり、

ある論文を読んだ後グループで話し合い、Reviewerとして査読コメントを書いてみたり、

実践形式で少しだけヘビーでしたが、とても実になるすごい授業でした。

また、各授業では研究室のメンターとなる先生方が3人はいてくださったので、毎回1人1人に個別指導でフィードバックをしてもらえました。

こんなに体系立てて、丁寧に、医学論文の書き方を指導してくださる授業は他にはないのではないかなと思いました。

 

次に、4時間目ですが、こちらでは「研究費申請書の書き方」を学びました。

日本の研究費に関する授業があるだけではなく、

この授業では自分たち1人1人が「今後自分の研究者人生でやりたい研究」を考えてきて、その研究を行うために研究費申請書を本気で作り込んでいきます。

同期に対して、①口頭プレゼン、②パワポプレゼン、③研究費申請書類をお互いに読み合う、と3回にわたって研究内容を共有します。

授業の内容もさることながら、この同期の研究計画を聞くのが興味深すぎでした笑

4時間目の授業は、講義形式の時間はほとんどなく授業中に各自で研究費申請書を作り込んでいきながら、2回に1回くらい10分程度の個別指導で研究内容について先生方に相談に乗っていただくスタイルで進んでいきました。

やはり、これまでに研究経験がある同期の方々は研究計画の精度が違って、自分も頑張らないとな、と刺激を受けました。

 

金曜1-2時間目 ”健康社会学”

オススメ度:★★★★☆

 SDH(健康の社会的決定要因)を考える上での、学術的な理論背景について学びました。

医学論文では、学歴や収入で健康のアウトカムが異なることから交絡因子として扱うことが多いですが、

「では、なぜ・どのように “学歴” が健康のアウトカムに影響するのか」

といったようなことを、これまでに提唱されてきた理論をもとに考えていきました。

正直、一回授業を受けただけでは、僕も理解し切れていない内容も多いです。

臨床疫学の論文では「社会経済的な状況(socioeconomic status)を補正しました」としがちですが、

その背景に、社会的な因子が “なぜ” “どのように” 健康アウトカムに影響しているのだろうか、というとことまで思いを馳せるようにしたいと感じるようになりました。

 

金曜3-4時間目 ”公共健康情報学”

Pythonを用いて実践形式で行われる授業とのことで興味があって聴講としたのですが、何回か出席できない間についていけなくなってしまい、離脱してしまいました・・・

 

金曜5時間目 ”社会保障法政策”

オススメ度:★★★★☆

厚生労働省の元事務次官の方が講義を取りまとめてくださっており、

各論の授業では、現役の厚生労働省の局長等が話に来てくださって、

医療、介護、年金、生活保護、などに関する社会保障制度について説明してくださいました。

医療や介護、年金制度のこれまでの動向から今後の懸念事項まで現場の方々から話を聞くことができて、とても勉強になりました。

ちょうど、「健康を維持するためには法整備や行政が大切だよなぁ」と感じていたところだったので、行政の話が聞くことができて、本当によかったです。

 

A2ターム (2021/11/29~2022/1/31)

金曜1-2時間目 ”健康教育学”

オススメ度:★★★★★

最初に行動理論について、ミクロ・メゾ・マクロの視点から講義があり、

それ以降の講義は、実践的な内容が多く、

大企業の産業医の先生からのケーススタディや、

足立区の「あだちベジタベライフ」の取り組み、

広告会社で働かれながらハーバードで公衆衛生学の博士もとられた方の、ヘルスコミュニケーションの講義、

また教室の鎌田先生の、自治体を挙げて住民の運動不足を解消を目指したソーシャルマーケティングの話など、

1つ1つの講義が、ものすごく面白かったです。

神授業が多発していたので、星5にさせていただきました笑

この授業も、元々興味があまりない人も是非受講してみることをお勧めします。

 

 

 

以上が、授業の感想でした。

 

東大SPHで受けた授業はどれも本当に興味深いものばかりでした。

オススメ度、という5段階評価があまりうまく機能しなかったくらいです笑

(ほとんど、4か5です笑)

この1年間の学びのおかげで、自分の健康や社会に対する視野が広がったことを実感しています。

 

 

なので、

「少しでも公衆衛生に興味があるなら、1-2年間勉強してみると世の中の見え方が変わるよ!」

ということを、ここで強調しておきたいと思います。

 

若手医師や医学生の方々が時折このブログを読んでくださっているようなので、

興味がある方にはぜひPublic Healthマインドを勉強してみてもらいたいなぁと思います。

 

また、東大SPHの特徴は、

「様々なバックグラウンドを持った同期がいて、みなさんとても優秀」

ということです。

僕はこの一年、優秀な同期たちに刺激を受けて、

自分が積極的にやっていくべきことや伸ばしていくべき能力と、

優秀な方々にお任せしておいた方が良さそうなことが、なんとなく分けられるようになりました。

 

とても貴重でかけがえのない1年間を過ごさせていただきました。

 

先生方もおっしゃっていたことですが、

「Public Healthは、社会の役に立ってナンボ」

だと僕も思っているので、

卒業後は実際に自分でドンドン行動に起こしていくことを意識していこうと思います。

 

入学前に、

「結局、東大SPHって何が勉強できるの?」

とすごい知りたかったので、

今回全ての授業の感想を書いてみました!

 

誰かのためになることを祈っております!

 

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