2021年度 東大MPHに合格した提出書類の内容を公開するよ

Pocket

どうも、こんにちは。次郎作こと布施田泰之です。

前回、↓こういった記事を書きました。

東大MPHの大学院の合格発表の結果公開するよ

 

結論を書くと、

東大のMPHコースの大学院に合格しました!笑

 

合格したので、やっとえらそうに受験の対策の記事がかけることになります笑

 

特に今回、

小論文とか活動報告書ってどう書くの!?

と、個人的にはとても困ったので、

実際に提出した書類を公開してその準備方法を書くことで、

来年以降の受験生や、そのほかのSPHの受験生の役に立てばいいなと思っています。

 

色々書く前に、僕の経歴を書かないとイメージが沸かないと思うので、そちらを書きます。

ブログに全部書いてありますが笑、

大学は東京医科歯科大学というところを出ていて、

研修医時代は、1年目は東京医科歯科大学の大学病院、2年目は福島にある太田西の内病院という市中病院で働いて、

医師3年目から国立成育医療研究センターというところで小児科の後期研修をしていました。

小児科の後期研修は3年間なので、医師5年目である今年で後期研修が終了することになります。

 

その小児科後期研修の終了のタイミングでの、東大MPHの受験になります。

 

 

活動報告書

それでは、まずは「活動報告書」についてです。

 

コレについては、テンプレートみたいなものが見当たらず困っちゃってました笑

なので、僕は海外で使われる「CV(履歴書)」をベースに、色々とアピールする書き方にアレンジしました。

 

色々書くのもあれなので、実際の文章を↓ここに載せます。

 

 

活動報告書

【公衆衛生学的な活動内容】

・新型コロナウイルスの最新論文を日本語要約している医師のサイト/ブログを毎日確認し、その情報を集約するサイトを作成し運営している

・医学書院から全科の患者教育のための疾患別ハンドアウトの作成の依頼を受けて、小児科領域の作成とその他の科の取りまとめ/最終校正をしている

・小児の遠隔医療相談を行う「小児科オンライン」という事業に2018年から関与しており、現在は遠隔医療相談のデータをまとめてStataを用いて多変量解析を行い、「新型コロナウイルス流行下での小児遠隔医療相談の相談内容の変化」という題名の論文を執筆している

 

【英語】

[留学経験]

・大学4年生時にガーナの野口英世記念医学研究所に3ヶ月間留学し、「アフリカ睡眠病」について研究を行う

・大学6年生時にタイのマヒドン大学でアジア最大の感染症内科や皮膚科で2ヶ月間、英語で臨床実習を行う。ガーナ・タイ共に学内の海外留学向けの給付型奨学金の対象に選出される

・初期研修2年目に、渡航費全額負担の短期海外研修生に選出され、9日間フィラデルフィア小児病院でobservershipを行う

[現状]

・2018年の医師3年目から最低で月1本、2020年4月からは週に1本、論文を読み日本語要約してサイトに公開している

・「Gordis Epidemiology」全440ページを、今回の受験に向け通読を行なった

 

【数学・統計学】

・大学受験時のセンター試験数学IA 97点、IIB 98点

・大学教養学部の終了する2年生の後期の「学力認定試験」で、数学(微分積分・線形代数・統計学の内容)で98点/100点と、医学部と歯学部の計145名のうち学年1位を獲得(別途書類添付)

 

【論文】

・症例報告2報(英文1、和文1)、原著論文1本(英文1)を、現在執筆中

【学会発表】

・2018年 第101回日本神経学会東北地方会「前兆として幻聴が見られた脳幹性前兆を伴う片頭痛の1例」

 

 

おぉ〜、こう書くとやっぱりいい感じにみえますね笑

 

実は色々と工夫したので、解説します。

①公衆衛生学的な活動について

まずは、公衆衛生学的な活動があれば記載と書いてあったので、

自分が運営しているサイトの話や、現在書いている論文の内容をアピールとして敢えて一番上に書きました。

COVID-19のサイトは、めちゃいい感じなので特に医師の方は活用してみてください!笑

リンクは、こちら

コレは捻り出した感じがありますが、臨床だけでなく広く興味があることと、実際に色々とやってますよ、ってことをアピールしました。

 

②英語力について

ここが実は一番困りました。

僕は英語がとても苦手で、

このブログでも公開してますが、

いまだにTOEFL iBT で80点超えてないからです・・・笑

受験生の中では点数は下の方の可能性が高いので、敢えて点数は書かない方法を取りました。

ですが、医学生の頃から「英語はできなくても海外に行く!」という強い意思の元、

しっかり留学経験があったのでそれを自信ありげに書き、全ての留学で給付型の奨学金を獲得できていたのでそのことも書きました。

あとは、臨床の合間に定期的に英語論文を読むようにしていたので「入学後も問題なく英語論文読みますよ」っていうアピールも含めて英語論文を日常的に読んでいることもアピールをしていました。

 

③統計能力について

コレも困りましたが、ちょうど5月くらいに統計ソフトを使い始めていたのでそのことを書いたのと、

奇跡的に医学生の堕落していた教養時代に、統計学の再試に引っ掛かり、ちゃんと勉強した直後に「学力認定試験」があったおかげで、メチャいい成績が出ていたのを思い出してそのことを書きました。

センター試験の成績でも可と書いてあったので、得意だったセンター数学の点数も載せました。

 

④学術活動について

これは、他のベテラン医師に比べるととても見劣りすると思いますが、

現在3本論文を書き始めていたので、まだpublishされていないにもかかわらず、しっかり執筆中と記載させてもらいました笑

 

以上が「活動報告書」で工夫したところになります。

正直、学術活動の実績や経歴がしっかりしているなら、海外のCVの形式でスタイリッシュに書いていたと思います。

色々とアピールした方がいいなと思ってこういう形式にしました。

 

 

小論文

次は、「小論文」になります。

けっこう色々と背景を調べながら、練りに練って、

ちょっと煮詰まっちゃった感じなので少し恥ずかしいですが、

公開します!

 

 私が医師として5年、小児科医として3年働いて感じる課題は「小児科では不要な受診が多く、本来注力すべき疾患・病気に対して適切な時間や医療資源を使えていない」という点である。具体的には、自宅で安静にするだけでよいウイルス性の感染症の患者に多く対応している一方、アレルギー疾患や発達障害、起立性調節障害による不登校など近年増加傾向で実生活にも影響を与えるような疾患に時間をかけて診察することが難しい環境となっている。

こういった小児科領域における外来受診の問題には、どういった原因があり、それに対しどういう対応策を講じることが出来るであろうか。

 「診療報酬制度」「小児医療費無償化」「患者教育」という3つの視点から論じていきたい。

 

 まず原因として、外来内容は診療報酬に強く影響を受けることが挙げられ、特に個人経営のクリニックでその影響は顕著である。令和2年度の改定後の診療報酬をもとに考えると、軽微な症状で受診してもらい短時間で診察を終わらせて処方を行うのが、初診料(282点)と処方箋料(68点)を数分で得られるため効率よく利益を出せるような保険点数(1点=10円)となっている。その場合と比較して、入念な問診と丁寧な説明を要するアレルギー疾患の管理や、話を聞いて行動変容を促すような発達障害や不登校などに対する診療は、時に30分から1時間ほど時間を要するが、再診料(48点)に加え小児かかりつけ診療料(438点)や小児特定疾患カウンセリング料(500点)程度の収入にとどまる。このように保険点数による収入の得やすさと実際に注力すべき疾患は必ずしも一致していない。そのため、医学的に必要性の高い診療に対して、より多くの医療資源が配分されるように診療報酬の面から誘導していくことが効果的である。2年に1度の診療報酬の改定は、中央社会保険医療協議会で細かい保険点数の調節がなされるが、医療現場の声がリアルタイムに反映されているとは言い難い。改善策としては、現場の医師からパブリックコメントの形でもっと現場の声を届けること、またそういった機会があることを周知することが望まれる。個人の医師だけでは自分の専門領域をより過大に評価してしまう恐れがあるため、小児科学会などの診療科をまとめる学会がデータやエビデンスをもとに今後注力すべき分野を示していくことも肝要である。

 

 次に、小児の「保険診療の無償化」が、受診のハードルを下げ不要な受診や処方を生み出している可能性がある。アメリカで行われたランド医療保険実験の結果(Brook et al., 2006)では、自己負担がないと受診回数や医療費が増え、自己負担が上がることによる健康状態の悪化は最貧層以外では指摘されなかった。医療費が無料になったことで生じたモラルハザードによる受診・処方の増加は小児科医が医療現場で感じていることであり、日本での学童の医療費負担の自治体ごとの違いを利用した自然実験の結果(Miyawaki and Kobayashi, 2019)からも、医療費の負担が全くないと既往のない児に対する処方が増えることやジェネリック薬品の使用頻度が下がることで医療費増大に繋がるということが指摘されている。政治的な意味合いもあり全国的に導入された「小児の保険診療の無償化」であるが、今後はこういった政策に対して少なくとも導入後にエビデンスを創出し評価できるような体制を作り、Evidence-based Policy Makingを行っていくことが大切だと考えられる。また、小児の医療費に関して言えば、完全に医療費を無料にするよりも上限を決めて少額の自己負担をしてもらう制度の方が医療費増大や医療現場の疲弊につながらない可能性が示唆されており、今後さらなるエビデンスの蓄積と改善案の追求が必要となる。

 

 最後に、患者教育の必要性がある。以前は「風邪には抗菌薬の処方」という診療行為が主流だったこともあり、ちょっとした子供の風邪症状や発熱で病院を受診される方がとても多い。しかし、抗菌薬は風邪に対する効果はなく、さらに小児科受診のための外出は市中や院内でのその他のウイルスの感染リスクを上げるため、不要な受診は控えてもらい「的確に受診/再診のタイミングを伝える」ことが小児科医の務めだと考えられている。それにも関わらず患者教育が進まない理由に、外来診療の多忙さや、受診してもらい処方した方が収入に繋がるという金銭的インセンティブの問題がある。多忙さに対しては、発熱・下痢などの症状やウイルス感染症に関してハンドアウトの作成/利用することによって、疾患の説明や症状が出た際の受診/再診の目安を丁寧に伝えることができる。また、金銭的インセンティブに関しては2018年から導入された「小児抗菌薬適正使用支援加算(80点)」で試みられたように診療報酬で「風邪には抗菌薬は不要である」という患者教育を主導することが有効だと考えられる。抗菌薬と同じように、風邪に対してエビデンスのない炎症止めや鼻水の薬が処方されていることも多く、そういった不要な処方も「風邪を治すにはお薬が必要」という誤った認識を与えることで不要な受診につながっている可能性が高い。そのため、抗菌薬の適正使用においての診療報酬の影響を評価した上で有効であれば、風邪薬にも順次導入していくことで患者教育へのインセンティブを持たせることができる。

 

 まとめると、診療報酬を医療現場に合わせて改定していくこと、小児医療費無償化の適切な評価と改善を行うこと、医師による患者教育のサポートとインセンティブをつけること、の3点により小児科における外来受診の適正化を図ることが出来、より適切な医療資源の投入方法を追求することができると考える。

 

 

 

 

 2500字以内で論じたにしては色々詰め込んだ気がします笑

 この文章を書くのにも色々と仕込み作業が必要だったので、準備過程をお伝えします。

 

 まず、実務で問題だと思っていた「小児科外来での軽症受診」をテーマに書こうということは決めていました。

 そして、まずはまっさらな気持ちで「診療報酬制度」「小児の医療費無償化」「患者教育」「遠隔医療」に関して文章を書いてみて、そこから文章を推敲していきました。

 その後に、書こうとしたテーマについてかなり深堀しました。

 

[診療報酬制度]

最新の点数の変更の特徴や、診療報酬制度の歴史を勉強するために、2冊ほど本を読み、大量のサイトを閲覧しました。

本としては、以下のような本です。

こちらは、診療報酬制度で点数の調節をしている中央社会保険医療協議会(中医協)の体制や歴史についての本で、とても勉強になりました。

もう一冊は、

診療報酬の仕組み自体を分かりやすく説明してくれた本です。

こういったものを読んだおかげで、小論文中でも細かい診療報酬の点数に踏み込んだ議論をすることができました。

 

[小児の医療費無償化]

小児の医療費が無償化されたことで「コンビニ受診」と揶揄されるような軽症の受診が増えたことは、小児科医は皆が感じていたことでした。

その受診に対して、不要と考えられている抗菌薬や風邪薬を処方することが開業医の収入源となり、過剰な医療とそれによる医療費の増加している可能性が指摘されていたので、その周辺の文献を調べて読みました。

有名な「ランド医療保険実験」のまとめ論文を読んだり、

こちら(https://www.rand.org/pubs/research_briefs/RB9174.html)

敢えて、東大MPHの「臨床疫学」の研究室からpublishされている論文(last authorが康永先生)を読み込んで引用したりして、

勉強していることを地味にアピールしていました。

 

↓こちらで紹介した論文です。Methodsが難しかったです。

日本の学童における小児医療費補助政策の有効性

 

 

あとは、聞いたこともない人も多いと思いますが、

「EBPM (Evidence-based Policy Making)」

つまり、政治で行うことであっても「根拠のある政策作成」が大切であるということが近年言われてきていて、内閣府からもEBPMを推進する動きが出ています。

こちら (https://www.cao.go.jp/others/kichou/ebpm/ebpm.html)

 

そして、この「EBPM推進委員会」の有識者として、東大MPHの教授の一人である橋本英樹先生が参加されているのを見つけて、

敢えて「Evidence-based Policy Making」に触れる文章にしました。

 

意外と、色々な思惑が練りこまれています笑

 

[患者教育]

これに関しても、本来は「小児抗菌薬適正使用指導支援加算」の影響についてまとめた論文があれば、そちらに触れる内容にするはずだったのですが、

2018年から導入された点数だったのでまだ論文が出ていませんでした。

なので、かなり一般的なことを書いています。

自分が「外来で使えるハンドアウト作成」という仕事もやっていたので、

面接で(実際に何かやっていることはありますか?あなたならどれから着手しますか?)などと、何か聞かれた時に、

「すでに取り組んでいます」と答えられるように仕込んでおきました笑

そして、次回の記事に書きますが、本当に面接で似たようなことを聞かれたのでした笑

 

 

 

 

以上、

僕が小論文に書いた内容や、小論文を書く際に勉強した内容を紹介しました。

 

おそらくかなり自己流だとは思いますが、色々深く考察したこと自体は評価してもらえたのではないかなぁ、と思っています。

 

元々筆記試験のつもりだったので、書類審査はかなり自信がなく、

「出来る限りのことはやっておこう」と思って色々調べて小論文を書きました。

 

おかげで、元々自分の興味があった「診療報酬」「医療保険制度」「EBPM」などのことについて、さらに勉強できたのでよかったなと思っています。

 

それでは、次は「面接内容」について書こうと思います!

 

P.S. 面接内容・面接対策について書きました!

↓興味あればご確認ください!

2021年度 東大MPHの合格の際の面接内容と対策方法を書くよ

 

布施田泰之

前の記事
次の記事
Pocket

Leave a Comment