タイトル
“HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer.”
Lei, Jiayao, et al. New England Journal of Medicine 383.14 (2020): 1340-1348.
原文はこちら
論文を一言でまとめると
スウェーデンの全国的な登録データを用いたコホート研究によると、
子宮頸癌のワクチンを打つと30歳までの子宮頸癌の発生率が有意に下がることが示され、特に17歳以下で接種した群では予防効果は顕著であった。
Methods
[場所/デザイン]
スウェーデンの国の登録データを用いたコホート研究
[Study Population]
・スウェーデンでは、2007年5月から女性へのHPVワクチンの助成金が始まり、2012年には13-18歳の女性に対する無料のHPVワクチン接種プログラムと10-12歳の女児に対する学校ベースの接種プログラムが始まっていた。
・2006年から2017年までの期間で、10-30歳の女性を対象に経過をフォローした。
[Data Collection]
1人につき1つ与えられたIDと紐づけられている国の登録データを使用した。
また、HPVのワクチンを接種したかどうかは、HPV Vaccination Register、Prescribed Drug Register、National Vaccination Registerのデータを用いて判断した。
[Exposure]
一度でもHPV(ヒトパピロームウイルス)ワクチンを接種した
[Comparison]
一度もHPVワクチンを接種していない
[Outcome]
子宮頸癌の診断 (Swedish Cancer Registerから診断情報を抽出)
結果まとめ
・1,672,983人の10-30歳の女性が研究対象となり、そのうち527,871人が最低でも1回HPVワクチンを接種していた。ワクチンを接種した方のうち83.2%にあたる438,939人が17歳より若い時に1回目のHPVワクチンを接種していた。
・ワクチンを打った方の中で子宮頸癌と診断されたのは19人であり、ワクチンを打ったことのない方の中で子宮頸癌と診断されたのは538人であった。
・30歳時点で累積発生率は、HPVワクチンを接種した群で10万人あたり47人、HPVワクチンを接種したことのない群で10万人あたり94人であった。
(原著より引用)
・発生率比(incident rate ratio)は、HPVワクチンを接種していない群と比べてHPVワクチンを接種している群で0.51 (95%CI [0.32-0.82])と有意に低かった。
・フォローアップ開始時の年齢、暦年、居住地や親の特徴で調整した発生率比は、HPVワクチンの接種した群で0.37 (95% CI [0.21-0.57])であった。
・特に、17歳以前にHPVワクチンを接種した群では調整発生率比は0.12 (95% CI [0.00-0.34])とより発生率比の低値は顕著であった。
・以上の結果より筆者らは、10-30歳の女性におけるHPVワクチンの接種が、子宮頸癌の発生リスクを下げる可能性がある、と述べた。
[Limitation]
・ワクチンを接種した女性がワクチン未接種とされている可能性がある
・補正仕切れていない交絡因子の存在や、healthy volunteer biasなどのバイアスが残っている可能性がある。
[読んだ感想]
HPVワクチンの子宮頸癌の予防効果が、直接的には初めて証明された論文となりそうです。
これまでもHPVの感染予防や前癌病変への予防効果は分かっていたようですが、これほど明らかな差がある証明されたので、日本の接種制度も変えていく必要がありそうですね。
特に、小児科医として興味深かったのは、17歳以下で接種した群では、子宮頸癌の発生リスクを下げる効果がさらに顕著になっている結果です。
つまり、産婦人科の先生が声をあげるだけでなく、小児科医も一丸となってHPVワクチンの接種推奨に動くべきだと感じました。