リステリア症 Listeriosis

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今日は、感染症科のカンファレンスで、若い女性が髄膜炎・脳炎を発症し、多発の脳膿瘍を作ってしまっている症例を経験しました。

その原因として、連鎖球菌のほかに、「若い女性だとリステリア症とかも鑑別にあがるよね」と議論されていましたが、

全くリステリア症について無知であったので、成書やサイトにあたって勉強してみました。

 

要点
・グラム陽性桿菌の L. monocytogenes が原因菌。

・食べ物を介して食中毒を起こす菌であるが、他の食中毒と違い胃腸炎症状が通常出てこない。

・症状は、風邪症候群に似ている(発熱、悪寒、頭痛、軽いめまい)であるが、重症化すると怖い。

・健常者の約0.6~10.6%の人が腸内細菌として、L.monocytogenesを持っているほど、健常者では感染しても通常症状が出ない。

・問題はリステリア症を起こしやすい人たちで、そういった人たちが発症すると致死率20~30%とものすごく高い。

・リステリア症を起こしやすい人たち
妊婦(健常人の20倍なりやすい)、胎児、新生児、幼児、免疫力が低下している患者(例、エイズ患者で300倍なりやすい)、老人。

・重症化すると、侵襲性リステリア症となる(髄膜炎・脳炎・敗血症)。また髄膜炎患者の20%に脳膿瘍形成。

以下に分かりやすい図を拝借して載せておきます。

リステリア
(横浜市衛生研究所 リステリア症について より)

・治療にはペニシリン・アンピシリン等を用いる。

・脳脊髄液に異常がない菌血症では2週間、髄膜炎では3週間の治療が考慮される。脳炎・脳膿瘍・心内膜炎ではさらに長い期間治療を要する。

・治療が短すぎると、再発(再燃)の可能性あり。

これ以上書くと、要点ではなくなるので、リステリア症の概要が分かるこれくらいにします。

ちなみに僕が見た症例では、脳膿瘍が多すぎて脳を圧迫してしまっていたので、仕方なくステロイドで脳の浮腫を抑えようという議論が行われていました。

 

以下、参考文献を載せておきます。

参考文献
・標準微生物学 p271
・横浜市衛生研究所 ”リステリア症について” (←リンクあり)
・厚生労働省 ”リステリアによる食中毒” (←リンクあり)

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