こんにちは、次郎作こと布施田泰之です。
僕は以前、80歳超えのおばあちゃんを担当しました。
入院時の採血でスクリーニング的にはかったHbA1cという値が6.5%でした。
HbA1cとは、糖尿病の1つの指標になる値で、6.5%より高値になると糖尿病である可能性が高くなります。
(あれ?でも、糖尿病の薬は何一つやってないぞ?)
僕は血糖測定の指示を入れました。
翌日確認してみると、そのおばあちゃんの血糖は毎食前200を超えていました(空腹時血糖が200以上は糖尿病の診断基準の1つです)
(やっぱり!糖尿病あるじゃん!糖尿病の治療しなきゃ!まずは食事からだな)
そう思った僕は、そのおばあちゃんの食事を糖尿病食に変えました。
その晩、おばあちゃんに会いに行くと、
「家族に持ってきてもらったお菓子、看護師さんに食べちゃダメって言われたんです・・・」
おばあちゃんは悲しげな顔をしていました。
「私は、コーラとケーキが大好きでねぇ」
(これはちゃんと血糖コントロールしなきゃな)
と、その時の僕は思っていました。
そんな時に出会ったのがこのReviewです。
“Polypharmacy in the Aging Patient
A Review of Glycemic Control in Older Adults With Type 2 Diabetes”
JAMAに掲載されたreviewで、
無料で公開されています。
このReviewの結論 だけ言うと、
「高齢者なら、HbA1cの値は7.5%~9%くらいでコントロールするのが、一番患者さんのためになるかもよ」
というものでした。
元々、糖尿病というのは、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管イベントや、
網膜や血管障害、腎障害などの微小血管障害を防ぐために長期的に血糖コントロールをしていくことが大切と言われています。
4つのRCT(randomized clinical trials ランダム化臨床試験)から分かったのは、
HbA1cが7%以下の高齢者で、
強化血糖コントロールは心血管イベントを防げるという証拠はなく、
微小血管障害も15年以上強化血糖コントロールを続けて初めて効果があるかもしれない、
程度の結果しかなかったようです。
つまり、高齢者では残りの人生の中で、血糖コントロールが必ずしもその人のためにならないのかも知れないということでした。
むしろ、低血糖のリスクが高くなるため、早い段階での治療介入は治療による利益より害の方が上回ってしまうとのことでした。
(しかし、さすがにHbA1cが9.0%を超えると、脱水や多尿などの症状が出てしまうため治療介入する方がいいのではないか、と言われています。)
ということで、
おばあちゃん、おじいちゃんに厳格な血糖コントロールは、
特に糖尿病薬やインスリンを使用した血糖コントロールは低血糖などのリスクの方が上回ってしまうために、
あんまり必要ないってことです。
(一応、運動療法や食事療法は低血糖などの合併症がほぼないのでいいようです)
僕は、これを読んですぐおばあちゃんに会いに行きました。
「この説明したHbA1Cって値、このご年齢で6.5じゃ大したことないみたいです。この前ご家族に持ってきてもらったお菓子、1日1個くらいなら大丈夫です」
すると、おばあちゃんは、
「ホントかい?それなら、甘さ控えめそうなこの抹茶のお菓子食べさせてもらおうかね。先生も1つどう?」
と、笑顔で言ってくれました。
僕の無知のせいでおばあちゃんの笑顔奪っちゃうところだったなぁ、と思って少し反省した出来事でした。
そして、後日。
本屋を徘徊していると、
↓こんな教科書がありました。
「トップジャーナルから学ぶ 総合診療アップデート」
~どこにいても、最良で、最新の医療を提供するために~
もしや・・・?
中身を立ち読みすると、
見事、さっきのJAMAのReviewが取り上げられてました!!!
まてよ・・・さっきのreviewは2016年3月8日掲載のやつなんだけど、
ホントに最新だなこれ。
いつ発売したんだろ・・・?
と思って、出版日を調べると、
2017年1月10日 第2版第1刷
5日前だ!!!笑
何か運命を感じて買っちゃいました笑
買って開いてみると、興味深い論文やReviewが、日本語で!、取り上げられていて効率よく勉強できそうです。
興味ある人は読んでみてください。
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