物語:哀しいうさぎ、嬉しいうさぎ

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みなさんこんにちは、ケンジです。

完全に趣味の世界ですが、

以前こういうものをご紹介しました↓

出典:I.IMGUR.COM
出典:I.IMGUR.COM

自分が訪れた国を順番に直訳していったら何が起きるか

ということです。

 

 

その結果ぼくのなかにうさぎを主人公とした物語が浮かんできてしまったので、書いてみました。

もう一度言いますが、完全に趣味の世界です。

 

 

 

国名の直訳一覧

韓国=朝の美しい光

台湾=海に近い地

タイ=自由

マレーシア=丘の国

ブルネイ=すごい平和の国

ネパール=山の麓

インド=川

エジプト=エーゲ海に沈む地

イスラエル=神と戦う

スペイン=ウサギ

アルゼンチン=銀

ボリビア=川の製粉所

チリ=地の果て

ペルー=川

アメリカ=商人の息子の合衆国

 

 

 

 

 

それではここから物語が始まります。

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

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うさぎ(スペイン)は朝の美しい光(韓国)を浴びて、この地に産み落とされた

しかし周りを見てみてもそこに親うさぎの姿はなく、子うさぎはすぐさま悟ったのだ。

 

走らねば

 

そこにいたのは、暖かく乳臭い体で彼を包み込む親うさぎではなく

冷たく、切り裂くような視線で彼を見つめる鷹の姿だった。

 

 

走るとも歩くとも言えない速度で必死に逃げる子うさぎに、余計な感情は生まれ得なかった。

 

とにかく生きるしかないのだ

 

それは感情でなく本能であり

結果的にはその本能が彼の命を永らえさせることになった。

 

 

走る最中、彼の体を、ヒトの数倍の視力を持つと言われる鷹の目から守ったのは、野の窪みの上に覆い被さった枯れ枝と枯葉だった

 

窪みに落ちた瞬間から、這い出るのはおろか鷹の目を警戒する気力すら失ったうさぎは、そこで葉にまみれまさしく泥のように眠った。

 

 

 

 

 

彼が再び目を覚ましたとき、辺りは暗く闇に飲み込まれたようだった

 

そのせいで彼は、自分がいま親うさぎの胎内にいるのか、それとも既にこの世に生まれているのかの判断がつかなかったほどだ

 

近くに聞こえた波の音が、余計にその奇妙な感覚を強いものにしていた

 

 

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そう、ここは海に近い地(台湾)だったのだ。

 

親の胎内を思わせる波の音を聞いて、うさぎは涙した

生まれて初めて流した涙だったが、彼はそれが何なのか分からず、ただただ空腹を満たすためにその塩辛く生暖かい水を舐めるしかなかった。

 

 

 

 

 

翌朝目覚めたうさぎからは、既に負の感情が薄れていた

そして、窪みから這い出て

 

鳴いた

 

今度は泣くのではなく、鳴いた。

 

 

ぼくは自由(タイ)だ

 

 

生まれて数日の赤ん坊とは思えない、力強い咆哮を聞いたのは例の鷹だけではなかったはずだ。

 

 

 

しかし自由を得たものについて回るのが

 

迷いだ

 

彼は迷った

ここから海に出るのが良いか、それとも山に向かうのが良いか

 

そうやって迷ううちに、彼はまた眠ってしまった

今度は葉にまみれるのではなく、枝と枯葉を使った特性の寝床の上でだ。

 

 

そしてもう眠りに落ちるという寸前、彼は自分で自分に願掛けをした

 

明日起きた時に頭が向いている方に行こう。

 

 

 

 

 

 

翌朝目覚めたうさぎは、昨晩自分にした願掛けを忘れていた

だが、どこに行こうかと迷っている時にふと波の音を聞き、思い出した。

 

 

 

そして海の方に向いた自分の頭を、山の方へ向け直したい気持ちを必死に押さえつけながら、覚悟した

 

海へ行こう

 

うさぎには分かっていたのだ。自分は野の動物

山に行けば、すぐにそれなりに暮らしを得ることはできる。

 

 

しかしうさぎはなぜかその節理に抗い、海の方へ向かった

そしてそこで見つけた船の積荷に忍び込んだ。

 

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船が出てから三回目の朝

とうとううさぎは人間に見つかってしまった。

 

 

 

「なんやこのうさぎは」

「まあまあそういじめずに」

「きっとこいつも丘の国(マレーシア)に行きたいんじゃろう」

「喰ってしまうか」

「丘の国(マレーシア)はまだまだ遠いからな」

「どうしますか、船頭」

「途中、すごい平和の国(ブルネイ)で下ろすとしよう」

 

 

 

彼は生き延びた。

 

 

 

その後、船員は彼を苛めたり、可愛がったりしながら過ごした。

 

 

産まれて初めて味わった、厳しさと優しさは

彼から冒険する気概を削いでいった。

 

 

 

うさぎは寂しがり屋の生き物なのだ

彼は寂しくなった。

 

 

それでもずっと一緒にいられるわけはない事もなんとなく分かっていた。

 

 

そしてその時はきた。

すごい平和の国(ブルネイ)とやらに船が到着したのだ。

 

 

 

船員たちは彼を乱暴に放り投げて、すぐさま港を出てしまったが

それが決して乱暴なだけではなかったことを彼は知っていた。

 

 

 

この国に着いた時

彼には少しの感情が備わっていたのだ。

 

 

 

 

 

優しくないもののようで本当は優しかった

船員のような存在もあれば、

 

優しいもののようで本当は優しくなかった

自分の親のような存在もあることを知った。

 

 

 

 

しかし彼が特別親を憎んでいるということはなかった。

 

 

 

いや、正確に言えば憎んでいたのかもしれない。

もっと正確に言えば、愛おしくもあっただろう。

 

 

だが、これはどうしようも無い問題で

憎むことも愛おしく思うこともしないほうが身のためだ

ということを彼は理解していた。

 

 

自分の感情を隠すのがとても上手だったのだ。

 

 

 

 

 

 

そしてふと彼は気になった。

 

この国にうさぎはいるんだろうか

 

自分が本当の孤独にいるのかどうか確認したくなったのだ。

そしてうさぎ達を探しに山の麓(ネパール)へ行くことにした。

 

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ただ確認するだけで、仲間がいようが孤独だろうがどっちだって構わない

 

そう思いつつ、

この時にも彼は自分の本当の感情に気がつかないフリをしていた。

 

 

 

本当は彼にだって仲間が欲しいのだ

 

 

でもああやって捨て鉢に振舞うことで

他にうさぎがいても、いなくても

どちらの状況にも合わせられるようにしているのがその時の彼だった。

それが彼にとっては、これ以上自分の心に傷を負わせないための手段だったのだ。

 

 

 

 

 

 

はたして、山の麓の川(インド)を上流に向かって歩いていると、彼は大きなうさぎの集落をみつけた。

 

そこに迎合したい気持ちと、それを跳ね除ける気持ちの板挟みとなりただ立ち尽くしているだけに見えた彼に、

一匹のうさぎが話しかけた。

 

 

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(Photo by flickr)

 

 

「きみ、自分だけが孤独って顔をしてるね」

彼は頷くことも否定することも出来なかった。

 

 

「そうやって自分を守るのがとっても上手なんだね」

その瞬間に彼の胸はドキリとなった。

 

 

 

 

うさぎの言う通り、

 

自分を自分で孤独にすること

これが彼にとっての身を守る術だった。

 

 

 

周囲に対する期待値を下げておいて

そうして、周囲からの施しがなくても

 

そりゃそうさ、ぼくは孤独だから

 

と平気な顔をしている。

 

 

そんな狡い考えかたを、彼は生まれた時にはもう身につけていたのかもしれない。

そしてそれをいきなり指摘された時に、彼ははじめて気がついた

 

フリをした。

 

 

 

 

 

このうさぎは一体何者なんだろう

 

思案していると、続けてうさぎは話した。

 

 

「ぼくと一緒に旅に出てみるかい?」

 

どこに行くんだろう

 

「行ってみたい場所があるんだ、エーゲ海に沈む地(エジプト)さ」

 

「ここから陸続きで行けるかもしれないし、行けないかもしれない。」

 

「その場所に何かがあるかもしれないし、ないかもしれない。」

 

 

 

この瞬間、

彼は生まれて初めて

 

 

笑った

 

 

もっとも、これは嬉しいとか面白いという類の笑いではなく

「どれだけでもぼくを追い込んでみてよ」

という、好奇心からくる不気味な笑みだった。

 

 

 

そしてその笑いのあとに、また笑った。

 

 

今度は急に可笑しくなってしまったのだ。

笑っている自分に気付いて、また笑った。

 

 

笑うっていうのは、なかなか良いものじゃないか。

 

「きみ、笑ってるね。意外と嫌いじゃないよ。」

「さあ行こう」

 

 

 

 

 

「走り方はこうさ」

「まずは西に向かって目一杯走るんだ。そうして疲れたら休憩して、今度は北に向かって走る。」

「北に向かって、疲れたらまた休憩して西に」

 

 

「月が出ている間は走るのをやめるんだ」

「ぼくは神と戦う(イスラエル)のが嫌いだからね。」

「太陽の神様がいるんだったら、月の神様がいてもおかしくはないでしょ?」

 

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(Photo by flickr)

 

「おっと今日は月がまんまるだね。月が見えなくなるまでは休憩さ。」

 

 

 

 

 

まるまるとした満月が夜明けとともに沈んだのをみると、二匹のうさぎは走り出した。

まずは西へ、そして北へ

 

 

二匹の運動能力は比較的同じくらいだった。

先に一方が疲れたり、先に他方が疲れたりとあまり文句の出ない日が続いた。

 

 

辛かったのは新月の日だ。

月が夜になっても出ないので、決めた規則に沿って彼らは一晩中走り続けた。

 

 

 

そうして走り続けて何回目かの満月が出るか出ないかという時、彼らは海に出た。

月の光を浴びて、まるで銀細工(アルゼンチン)のテーブルクロスがそこにあるかのように波打っている海を見たとき

彼はとても懐かしい気持ちに包まれた。

 

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(Photo by flickr)

 

そして彼は、少し得意げに、でも同時に少し恥ずかしげに隣にいるうさぎを見やった。

今までに海を見たことのなかったうさぎは、恍惚とした表情を浮かべ、何時間経ってもそこから動こうとはしなかった。

 

 

その時彼がなにをしていたかと言えば、隣のうさぎと一緒になって海を眺めていたわけではなく、

どこか言いようのない不安に襲われていたのだった。

 

 

うさぎはこのまま海に引きずり込まれて居なくなってしまうのではないか。

旅はもうここで終わりなのだろうか。

 

 

この頃になると、彼が2匹での旅に喜びを感じ、楽しんでいることは明確であった。

 

だからこそ生まれ得るそれらの強い不安は、やがて怒りへと姿を変え、直接うさぎの方へ矛を向けた。

 

2匹は喧嘩をした。

爪で引っ掻き、牙で噛み付き、足で体を蹴った。

 

 

 

 

そう長く喧嘩をしていたわけではないだろう。

彼らにとってもそれは長い時間だったわけではなく、

疲れきった体は長い喧嘩を許さなかった。

 

 

そのまま何時間寝たのかもわからない頃、2人は同時に目を覚まし、

海に沿ってひたすらに走り出した。

 

 

 

 

彼はまた1つ学んだのだ。

怒りの後には必ず罪悪感がやってくることを。

 

 

彼は今、隣のうさぎを無理やりに走らせてはしないかと不安に思っていた。

昨日自分が怒りを表現してしまったがために、うさぎは今走っているのだろうか。

 

怒りの後には必ず罪悪感と後悔がやってくるんだな。

そう彼は頭の中に刻み込んだ。

 

 

 

 

そうこうしているうちに、海はその幅を狭め、対岸が見えるほどになってきた。

実は2匹がついた海岸は、川の河口からすぐの場所で、北に向かって少し走ればそこはもう川になるという場所だったのだ。

 

 

 

 

川に沿ってしばらく走ると、そこには製粉所があった(ボリビア)

 

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(Photo by flickr)

 

匂いを察知した彼らはどちらともなくその製粉所に忍び込み、大麦小麦の類を手当たり次第に食い散らかした。

旅に出てからというもの、まるでちゃんとした食事にはありつけていなかったのだから当然だろう。

そしてこの

「好きなだけ食べて好きなだけ寝る」

という幸福を体験したのも彼にとっては初めてのことだったが、それは

 

 

まさかこんなことが許されていいのか

誰かに怒られやしないか

 

 

という不安が入り混じる、ひどく脆い幸福感であった。

 

 

 

 

「さーて、どんどん上流に行ってみるかい」

 

彼では無い方のうさぎが久々に話している。

 

「エーゲ海に沈む地(エジプト)なんて言うから、地の果て(チリ)にでも行くと思ったかい?」

「海辺じゃなくて、実は山が海に沈む地だったってとこにロマンがあるんじゃないか。とにかく川(ペルー)沿いにどんどん登っていこう」

 

 

 

川沿いにどんどんと緑を深めていく風景と、その色彩を眼の端で捉えつつ、

彼はそのたった数カ月足らずである自分の半生について思いを馳せていた。

 

 

思えば自分が生まれたときに脳内を占めいていたのは哀しみだけであった。

しかしすぐさま生後2日目にして、それを心の暗い奥底に鍵付きで押し込め、ないものにしてしまった。

 

 

それからというもの、比較的悲しい出来事はなかったように思える。

 

 

初めて見た海から乗った貿易船の中では、人間の温かみと厳しさを経験しそこに喜びを覚えたほどだった。

 

 

その後出会った一匹のうさぎにはまんまとけしかけられた。この旅に出たのも彼に焚きつけられたからだろう。

その時には、「なんでもかかってこい」と笑みを浮かべてしまったほどである。

そしてそんな歪んだ笑いに身を窶す自分を遠くから眺めた時、

本当の無邪気な笑いが重く固い扉を開けてようやく這い出てきてくれたように思え、そこには安堵感だけがあった。

 

 

彼とは喧嘩もした。

旅に連れ出した自分を放って海に夢中になっていたからだ。

そして怒りの後にはそれ相応の罪悪感が襲ってくることも学んだ。

 

 

 

彼にとってそういった全ての経験は

 

商売のようなものだった

人に時間を与え、それに対して感情を得る。

のんきなようで呑気ではない、そのやり取りを彼は

息をするかのように無意識にこなしていた。

子供だから、いや、そうではないだろう。

のびのびと育ったわけでもない彼だから

合点がいかないことも多かっただろう。

衆生を憎んだこともあったかもしれない。とにかく

国が国民の総意を集めて政治を行うように
(アメリカ)

彼も自分の心の中のあらゆる感情の中からひとつの総意を採って表に出していたように思える。

そういった点で彼の性格は不幸であるともいえるのかもしれない。

 

 

 

 

この日は満月の日だった。

日が落ちるとともに月が顔を出し、

彼らは東の方角にその山肌を向けている山の中腹で寝ることにした。

 

この夜、彼は眠れなかった。

 

旅を始めてからというもの、いつしっかりとした寝床があるともわからない状況で、

こんなに安全な場所があればすぐに寝付いてしまい、月が姿を隠す時に備え準備したものだ。

 

しかし、

この夜彼は眠れなかった。

そしてさっき走りながら考えていたようなことを頭で反芻していた。

夢を見ていたのかもしれないし、見ていなかったのかもしれない

反芻するうちに、彼は自分が今何を考えているのかわからず混乱した。

 

 

洪水・嵐・地震・噴火

 

 

彼の頭の中であらゆる天災があらゆるものを滅茶苦茶に壊して通り、後に残ったものは太く長い一本の木だけであった。

彼の頭の中には、彼自身がありありと描かれていて、その頭の中の彼は一本の木のほうへ向かっていった。

そこにとても温かいうさぎの影を見たような気がしたからだ。

 

 

誰だったのだろう。

それ以降、彼の頭の中で想像の景色は止まってしまい進むことはなかった。

 

 

おもむろに体を起こした彼は、燃えている木炭のように鈍い赤色の朝空に目をやり、

 

 

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そして泣いた

 

 

 

今度は鳴くのではなく

 

泣いた

 

 

 

 

「きみの旅もここで終わりだね」

「ここがきみにとってのエーゲ海に沈む地だったってことさ」

「もっと泣きなよ、好きなだけ」

 

 

 

 

(Photo by flickr)

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