Severe Sepsis & Septic Shock(INTENSIVIST VOL.6NO.3)の重要項目まとめ

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目次

1. 【SepsisとSeptic Shockの定義・診断】
2. 【Sepsisの初期蘇生】
3. 【Sepsisの抗菌薬治療】
4. 【Sepsisの輸液療法】
5. 【輸液療法のまとめ】
6. 【Sepsisの昇圧・強心薬】
7. 【Sepsisとステロイド/血糖管理】
8. 【SepsisとARDS】
9. 【Sepsisと感染源コントロール】
10. 【Septic DICの病態と評価】
11. 【Septic DICの治療】

 

 

 

その他の巻についてもこちらをご覧ください↓

INTENSIVIST 重要項目まとめ

 

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【1.SepsisとSeptic Shockの定義・診断】
(追記:敗血症の定義及び診断については、数年の間に目まぐるしい変化に見舞われていることから、2019年現在、2014年発刊当時のINTENSIVISTを引用するとともに、新しい知見を随時盛り込むこととする。なお、これは2009年発刊のAKIのまとめなどについても同様の措置をとっている。)

以下、主にアメリカ集中治療学会2016を参考にした。
(参考:http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03169_01)

[定義]
・敗血症
感染に対する宿主生体反応の制御不全により、生命を脅かす臓器不全を生じている状態。

・敗血症性ショック
敗血症の中でも、特に、重度の循環・細胞代謝異常を呈し実質的に死亡率が上昇している状態。

[診断]
・敗血症
感染症が疑われ、かつSOFAスコアが2点以上増加したもの。
(SOFAスコアは臓器不全の指標)

・敗血症性ショック
十分な輸液負荷にも関わらず、平均動脈血圧≧65mmHgを保つのに血管作動薬の使用が必要で、かつ血清乳酸値≧2mmol/Lを超えるもの
(血圧の部分が、循環異常を指し、乳酸の部分が細胞代謝異常を指す)

文献1)JAMA. 2016[PMID : 26903338]

 

・「重症敗血症」という用語の消失
旧定義における「臓器障害のない敗血症」は取り扱われなくなり,新定義の敗血症は「感染症が疑われ生命を脅かす臓器障害」とされた。これにより新定義では,「重症敗血症」という用語はなくなった。

 

・ICU外では「qSOFAスコア」を採用
SOFAスコアは頻回な動脈採血が必要であるなど、ICU内の患者を対象にしたスコアリングともとれることから、ICU外での敗血症初期診療にはquick SOFAスコアという概念の導入により簡便にスクリーニングを行う手法が考案された。

・GCS 15点未満
・収縮期血圧100 mmHg以下
・呼吸数22/分以上

のうち2項目以上を満たす場合にqSOFA陽性となり、その時点で敗血症を疑ってSOFAスコアを使用し臓器障害の評価を行うことが推奨されている。
(筆者追記)
GCS 15点未満で1項目陽性となるということは、言い換えればGCS 1点の低下でも陽性であるということであり、つまり「目を閉じている」「見当識障害」「指示動作が入らない」のいずれか一つでも認めれば「意識の変容」と捉えなければならないことを示している。
しかし、ここで大事なのは、あくまでも「常日頃からの変化」に目を向け、特に高齢者の診療においては、積極的に同居家族への聴取を行うことである。

文献1)JAMA. 2016[PMID : 26903338]

 

 

 

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【2.Sepsisの初期蘇生】
Surviving Sepsis Campaign hour -1 bundle (2018 update)
敗血症診療の最初の1時間で以下5項目を実施するというもの。

① 乳酸値を測定し、2mmol/L以上は再検せよ(弱い推奨)。
② 抗菌薬投与前に血液培養検体の採取(best practice)
③ 広域抗菌薬投与(強く推奨。中等度エビデンス)
④ 低血圧or 乳酸4mmol/L以上なら30ml/kg乳酸リンゲルの急速投与を開始する。
(強く推奨。低エビデンス)
→一般的には低血圧の境界はqSOFAにおけるsBP<100mmHgや下記⑤にあるように平均動脈圧<65mmHgにおかれることが多い。
→補液のスピードに一定の見解はないが、基本的には全開投与で良いと思われる。
以前までの3hrバンドルでは「3hr以内に30mL/kgの晶質液を投与する」となっていたことから、10mL/kg/hr程度の投与速度も目安の一助となる。

⑤ 輸液後、平均動脈圧≧65mmHgを保てなければ昇圧剤の使用を開始する。
(強く推奨。中等度エビデンス)
→目標は65mmHgで良く、それ以上を目指す必要はない。
(N Engl J Med 2014 Mar.18)

ただし、実際には1時間以内に敗血症と診断することや、抗菌薬の投与を開始することは容易ではないし、またこういったプロトコル化された治療には常につきものではあるが、すべての患者の病態を同一視し、画一化された治療を開始することのリスクを念頭においておく必要がある。
具体的にそのリスクとは、抗菌薬の過剰投与によるCD腸炎の発症や耐性菌の出現、あるいは不必要な過剰輸液などが挙げられる。

 

 

 

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【3.Sepsisの抗菌薬治療】
・感染源不明時:メロペン+バンコマイシン、またはゾシン+バンコマイシン
・肺炎:クラビット+ゾシン+バンコマイシン
・UTI:メロペン
・胆道:ロセフィン+フラジール
・腹膜炎:メロペン
・好中球減少:メロペン+バンコマイシンまたはゾシン+バンコマイシン

・敗血症バンドルで治療すると耐性菌の増加が危惧されており出来る限り早くdeescalateすることが重要。

・抗菌薬の治療指標として、 PCT(プロカルシトニン)が挙げられ、PCTガイド下での抗菌薬治療が行われてきたが、万能というわけではない。


http://www.marianna-u.ac.jp/dbps_data/_material_/ikyoku/20160830Honda.pdf

・また、PCTガイド下に抗菌薬投与の終了を検討する治療法については、まだ議論の余地があり、治療方法が完全にデザインされたRCTでの死亡率低下や抗菌薬投与日数短縮を示すエビデンスはあるものの、後ろ向きにリアルワールドでの(PCTを毎日測定できないなどの)使用を分析した論文では、逆に投与日数が長くなり、CD腸炎の罹患が増え、死亡率は変わらなかった。
実臨床の使用では、毎日の測定が困難であることなど、RCTのデザインと離れていることなどが理由と考えらえる。
(参考:http://hospitalist-gim.blogspot.com/2017/06/blog-post_20.html)

 

 

 

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【4.Sepsisの輸液療法】
(参考:https://drmagician.exblog.jp/25135229/)

a. 輸液量の検討
・近年EGDT(Early Goal Directed Therapy)に基づいたいわゆる「大量輸液療法」についてはその有効性を疑問視する論旨が多く見られる。
・循環動態の評価を無視した、惰性で行われる「大量輸液」は脳浮腫や腹部コンパートメント症候群をはじめとして、全身の浮腫につながり明らかに有害である。

・しかしながら、それは敗血症性ショックの初期蘇生で輸液負荷を行ってはならないという意味には全くならない
・以前に輸液量と死亡の関連性を自施設で後ろ向きに検討したことがあるが,敗血症性ショック疑いで初期大量輸液を行わなかった症例は死亡率100%であった。
(上記サイトより引用)

(私見)
・実際には、よほど敗血症診療に熟達していない限りは、まずは上記のSSC hour -1 bundleに従って30mL/kgの輸液負荷を開始することで、初期診療で一定のクオリティが保たれるものと考える。
・初期輸液負荷の終了後には、循環動態の再評価や輸液反応性の評価を行い(評価の詳細については後述する)、適宜輸液速度を調整する必要があるといえる。
・初期輸液負荷が終了し、循環動態の再評価や輸液反応性の評価を行う技術がない、あるいはそのような時間的・人的資源に恵まれない場合にはEGDTやSSCG2012 Bundleが過去のものであることを承知で使用することもやむを得ないと考える。
(SSCG2012の6時間目標とEGDTはCVPとScvO2の目標値において実質一致している。)


http://www.marianna-u.ac.jp/dbps_data/_material_/ikyoku/20170516Endo.pdf

・過去の指標である、EGDTに従うことが場合によって許容され得ると考えるのは、「usual care群と比べ入院期間を長くし、コストを高めたものの、死亡率には差がなかった」からである。
(PRISM 試験)

 

b. 輸液製剤の検討
①乳酸リンゲルVS 生理食塩水
→乳酸リンゲルで死亡・透析・腎障害の複合アウトカムが優れていた
→生食は高Cl血症によるアシドーシスやAKIのリスクがあり、大量投与は行わない

②アルブミンを使用するかどうか
(参考:https://drmagician.exblog.jp/21822362/)

晶質液に加えてのアルブミンの併用は平均血圧を上昇させ,心拍数を改善させ,循環作動薬・強心薬の使用期間を短縮し,初期7日間の体液バランスが有意に低いが,メインアウトカムである28日および90日死亡率に有意差はなかった。
(私見)→大量の晶質液が必要となりそうな場合に、intakeを減らす目的や、低Alb血症を併発している場合には積極的な使用を考慮しても良いかもしれない

③HES(ヒドロキシエチルデンプン)は使わない。
・HESというと耳慣れないが、人工膠質液のことであり、現場で良く使われているのは、ボルベンやヘスパンダーなど
・敗血症患者において、HESを使用した患者で死亡率の上昇や腎代替療法に移行した割合が多かった。(CHEST study)
→HES投与は予後を悪化させるものとして、現在では使わないことが推奨されている。

 

c. 循環動態の評価
参考:https://drmagician.exblog.jp/24106425/
参考:https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/161101.pdf

・上記のように前負荷の増加に応じて一回心拍出量が増加するが、前負荷がある一定レベルを超えるとむしろ一回拍出量は減少することも知られている。

・よって、一回心拍出量の増大が得られる前負荷の上限が輸液量の目安となってくる。

 

①CVP
・循環血漿量の予測指標としては不十分。
・その精密度は輸液の施行有無をコイントスで決めているのとほぼ同じ。
(Crit Care Med 2013; 41: 1774-81)

②ScvO2
・末梢組織の酸素利用障害によって、中心静脈の値であるScvO2が上昇する。
・ScvO2>70%が末梢循環不全の目安と考える。

③IVC径
・IVC径の変動によるfluid responsivenessの予測は様々な要因で偽陽性・偽陰性が生じる

④SVV
・動脈圧波形の呼吸性変動から算出される一回拍出量の変化
(循環血漿量が減少している状況では変動が大きくなる現象を利用)
・SVV>13で輸液反応性を期待する
・ただしSVVによるモニタリングは以下の状態を前提として用いる必要がある
〇不整脈がないこと
〇自発呼吸のないこと(人工呼吸器強制換気中であること)
〇一回換気量8mL/kg以上であること

⑤乳酸値
SSCGでも初期治療の指標となっており、乳酸クリアランス(初期値からの低下割合)が治療効果の指標とはなりうるが、組織の低酸素、低灌流を必ずしも反映しているわけではなく、循環の指標として使うことは難しそう
→治療目標として乳酸クリアランス10%~20%(2hrごと)を目指すと生命予後が改善するかもしれない。

⑥PLR test(Passive Leg Raise test)

・測定方法
ⅰ. 45度上肢挙上からスタート
ⅱ. 患者に触ることなく、下肢を45度挙上する。
ⅲ. この状態で一分間待った後に心拍出量を計測(MAPの測定のみでは感度が低い)
ⅳ. 元の状態に戻して、心拍出量がもとの値に戻ることを確認(容量負荷という要因のみで拍出量上昇が得られていたことを確認)

・備考
ⅰ. PLRによる心拍出量の変化は、容量負荷による心拍出量の反応性を非常に正確に予測するが(特異度91%, 感度85%)、動脈血圧の変化の効果を評価すると、PLRテストの特異度は許容できるが感度は乏しかった(特異度83%, 感度56%)
→血圧は血管抵抗という因子によっても規定されているためカテコラミン使用下では不正確な指標となってしまう。

ⅱ. 頭蓋内圧亢進の可能性や、腹腔内圧上昇、腹部・下肢に疼痛がある状況では施行困難。

ⅲ. 一回心拍出量の増大が得られる前負荷の上限が輸液量の目安となってくる。

 

⑦Fluid Challenge
頭蓋内圧亢進患者や、疼痛、あるいは様々な理由でPLRが施行出来ない患者においては、実際に少量輸液負荷を実施して心拍出量の変化を確認。

<一回拍出量の測定>
→左室流出路径(長軸像のAorta径)の2乗と平均流速に比例する。

 

⑧CRT:Capillary Refilling Time
ANDROMEDA shock trialより(http://hospitalist-gim.blogspot.com/)
・CRT:右示指末端の腹側で、スライドグラスを用いて10秒間、皮膚が白くなる状態で圧迫し、元の皮膚色に戻るまでの時間を計測。
・3秒以上を異常と定義する.
・CRTを測定することは、上記のような乳酸値のフォローによるものと同じ精確さで治療をモニタリングできる。
・ただしtrialでは30分毎にCRTを計測していた。
・またresponderに対しては、CRTが正常化するまで、その都度500mLの補液負荷をかけていた。

 

⑨TPTD
Trans Pulmobary ThermoDilution
(参考:https://drmagician.exblog.jp/24142691/)
・中心静脈カテーテルから冷水を注入し、動脈カテーテルによって動脈血の温度変化を測定することによって心拍出量を計算する。
・右心カテーテルによる熱希釈法と同様の原理を用いている。
・TPTD study(敗血症のTPTD管理 vs CVP管理)の中間報告では、人工呼吸器管理日数はTPTD群で有意に短縮された。
・カテコラミン投与期間についても,TPTD群ではCVP群と比較して日数が短縮される傾向にあった。
(追記:ただし、そもそもCVPの指標としての有用性が確実でないと分かったいま、「CVPよりも優れている」という結果にどれほど意味があるかは疑問である。)

・デバイスを新たに導入する必要があるが、それにより主に下記の指標を測定できる。

a. GEDV
・心臓拡張末期容量指数
→心拍出量は左室拡張末期容量に依存するというフランクスターリングの法則に基づいて有用性が生まれる。

・正常値は680~800mL/m2
→輸液負荷の前後でモニタリングすることでrespond/non-respondを評価できる。

b. EVLWI
肺血管外水分量指数
→肺水腫の程度を評価することが出来る。

・正常値は3.0~7.0ml/kg

 

 

 

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【5.輸液療法のまとめ】
参考:https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/161101.pdf

上記の指標のうち、現在エビデンスがしっかりしているのは、

①PLRによるresponder/non-responderの評価
②SVVによるresponder/non-responderの評価
(ただし、不整脈なし・機械換気中などの条件あり)
③乳酸値、CRTによる治療反応性の評価

であることが分かった。
これを踏まえて、総論的に輸液療法をまとめると、

(補足:ノルアドレナリン早期少量投与について)
CENSER trialより
・敗血症性ショック患者への早期少量ノルアドレナリン投与(0.05μg/kg/min)は、標準治療と比べて、6時間以内のショック治療成績が良い可能性が示唆されている。
・肺水腫や新出の不整脈の頻度も少ない。
・ただし28日死亡率に有意差なし

 

 

 

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【6.Sepsisの昇圧・強心薬】
<第一選択はノルアドレナリン>
・上記のごとく、早期からためらわずに少量投与を開始することで治療成績を向上させる可能性がある。
・SSCGでの治療目標はMAP>65mmHg
・ただし、慢性高血圧症患者、動脈硬化が予想される患者においてはMAP65mmHgでは十分でない可能性があり、その目標は85mmHg程度とされる。

https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/161101.pdf

<ノルアドで不十分な場合にはバソプレシン>
・昇圧剤はノルアドレナリンの腎保護作用がドパミン(DOA)に勝る。
・さらにドパミンでは不整脈などの有害事象が有意に増え、死亡率が高い。
・ノルアドレナリンで昇圧が難しい時はバソプレシンの投与を検討する。
(ただし、後述のSIMDを除外したうえで。敗血症による、純粋な血液分布異常による循環血漿量不足の病態に対してのみ、NOA + VAP)

(hospitalist.jp/wp/wp-content/themes/generalist/img/medical/jc_20180721.pdf)


https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/161025.pdf

・ノルアドレナリン+バソプレシン使用時に昇圧薬を減量/中止していく際には、ノルアドレナリンから行う方が、緊急的介入を行う低血圧が生じにくい可能性がある。

 

<敗血症誘発性心筋症という病態>
(参考:http://敗血症.com/assets/2017_symposium_03.pdf)
・敗血症性ショックの病態は血管透過性亢進に伴う血液分布異常であり、昇圧薬の第一選択はNOA
・しかし、このようなショックの病態とは別に、心原性ショックにより血圧低下を呈することがあり、これが敗血症誘発性心筋症SIMDと呼ばれている。
・心機能低下があり、SIMDが疑われる状況であれば、昇圧薬はNOA+アドレナリン
・たこつぼ型心筋症とは異なる病態で、左室拡大・びまん性左室壁運動低下が起きる。
(タコつぼ型心筋症は、ストレスに起因する左室心尖部の壁運動低下)
・7-10日程度で回復するが、Sepsisの20-40%の患者で合併。
(J intensive Care, 2015)
・心エコー検査で、diffuse hypokinesisを見た際にはSIMDを疑う。
・強心作用のないバソプレシンは病態を悪化させる!
・さらにDOBについても、心機能を改善しにくいため積極的な使用は推奨できない。
・使用方法はおおむねNOAと同様で、少量から持続投与を開始し0.01γ~0.3γで管理。
(1mg3A + NS47mL → 0.5ml/hrで0.01γ、5mL/hrで0.1γ)

 

 

 

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【7.Sepsisとステロイド/血糖管理】
[ADRENAL Study]
(参考:http://www.kameda.com/pr/intensive_care_medicine/post_14.html)

【Patient】
人工呼吸を要し昇圧剤か血管作動薬が最低4時間使用された18歳以上のSeptic shock
【Intervention】
ソルコーテフ200mg/dayを連日持続投与
【Conclusion】
・ハイドロコルチゾンは敗血症の90日死亡率は減らさない。
・しかし副次評価であるショック離脱、ICU free days alive, MV期間短縮、輸血割合減少の4つのPositive Outcomeを期待して使用するか?しないか?
・ハイドロコルチゾンで予後が改善する集団がいるという仮説を残すためハイドロコルチゾンを使用する、もしくは限定的に使用する。

 

[間歇投与 or 持続投与?]
[Comparison Between Continuous and Intermittent Administration of Hydrocortisone During Septic Shock: A Randomized Controlled Clinical Trial.]
Nejla Tilouche et al. Shock. 2019 Jan 7

・成人の敗血症性ショック患者に対して、200mg/dayのハイドロコルチゾン(ソルコーテフ)を持続投与or 50mg q6hrで投与した場合のアウトカムを比較した。
・7日以内のショック離脱率が間歇投与群で有意に高かった。

 

[血糖値管理]
・血糖管理目標の上限値は180mg/dlに設定する。
・二回連続で血糖値が180mg/dl以上となった時点でインスリンの投与を開始する。
・intensive insulin therapy(BS 81-108mg/dlで管理)を行うことによってICUでは90日死亡率が高くなる。
・血液培養陽性でみる易感染性については有意差なし(2009年NICE-SUGAR試験)
・ICUにおける血糖管理についての総論は下記。

http://www.jseptic.com/journal/108.pdf

・スライディングスケールによるインスリン投与については、各施設基準に準拠する。
・持続投与については下記を参考に投与する。


http://www.mh.nagasaki-u.ac.jp/medical/download/0407insgl.pdf

 

 

 

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【8.SepsisとARDS】
・ARDSでは人工呼吸器管理に伴い肺障害が生じることから、低1回換気量によりVALIを最小限にしつつ生命を維持するために最低限のガス交換を保つコンセプト。
・ARDSの死亡率を下げることが分かっている。
・結果として生じる高CO2血症については、酸塩基平衡が代償出来ている範囲内で許容していく戦略をとる(Permissive Hypercapnia)


・Driving pressureという概念が、ARDSの肺保護換気において重要である。

・Driving pressureとは、自発呼吸のない患者に対して、吸気終末と呼気終末の気道内圧差で規定される(プラトー圧-PEEPとも表現できる)
→ARDS患者では、上記理由から背側肺で機能的肺容量が著明に減少しており、例えば、4-8mL/kg/minなどの低一回換気量の基準は、人工呼吸器導入時の目安とはなるが、経時的なモニタリング指標とするには不適当な可能性がある。
→Driving Pressureの概念は機能が残存した肺のサイズをもとにした指標であることから、ARDS肺の評価には適していると考えられる。

・呼吸器パラメータにおいてARDS患者の生存率に関連していたのはDriving Pressureだけであった。

・一回換気量やプラトー圧が正常上限値以下でも、Driving Pressureが高ければ死亡率が上昇していた。

・Driving Pressureが高くなれば肺保護作用が低下し、Driving Pressureが低くなれば肺保護効果を呈するようになる。

・Driving Pressure <14cmH2Oでは院内生存率が上昇した。
→ARDS患者に対して、V-V ECMOの導入による超低一回換気量管理によりDriving Pressureを下げ、生存率を上昇させることが出来るか。

・自発呼吸のある患者に対して、Driving Pressureを下げることによって呼吸努力が強くなるようなことがあれば本末転倒である。

 

<PEEPの設定>
・気道内圧を指標としてPEEPを設定する場合
① プラトー圧<30cmH2O
② Driving pressure<15cmH2O
を基準とする。

・また、中等度以上のARDSに対しては下記のtableを参考に高めのPEEPを用いることを検討する。

https://derangedphysiology.com/main/required-reading/respiratory-medicine-and-ventilation/Chapter%205121/optimal-peep-open-lung

・気道内圧=経肺圧+胸腔内圧と表すことができ、胸腔内圧≒食道内圧となることから、近年、食道内圧モニタリングを行いながらARDSのPEEPを設定することが行われてきたが、実際には、上記のHigher PEEP tableを使用しながら治療した群と28日死亡率や人工呼吸器離脱日数において有意差が生じなかった。
(Jeremy R. Beitler et al. JAMA 2019 Feb 18)

 

 

 

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【9.Sepsisと感染源コントロール】
・感染症治療において抗菌薬療法が主体ではあるが、それ単独では制御困難である場合も多い。
・血流が十分でない臓器、組織や閉鎖腔、デバイス、バイオフィルムなどが挙げられ、物理的な除去が求められる。
・また、敗血症で問題となる、ミトコンドリア関連分子であるPAMPsが全身を駆け巡り、過剰な免疫反応を惹起することから、その感染源の速やかな除去が要求される。

 

[①膿瘍などの感染性液体貯留]
a. 化膿性肝膿瘍
・画像診断後に、サイズや性状ごとにアルゴリズムに従って治療を行う。

 

b. 胆管炎及び胆嚢炎
・急性胆管炎
→原則的に胆管ドレナージを行う。
→適切なドレナージが行われれば抗菌薬治療期間は4-7日間で良いされる
(主な起因菌がGNRでありIEなどの血流感染を生じにくいことから)

・急性胆嚢炎
→早期の胆嚢摘出術やドレナージを行う(入院後24時間を推奨)

 

c. 腎周囲膿瘍・気腫性腎盂腎炎
・画像診断後に、サイズや性状ごとにアルゴリズムに従って治療を行う。
・腎周囲膿瘍

 

・気腫性腎盂腎炎

 

[②感染を伴う組織のデブリドマン]
a. 壊死性菌膜炎
・壊死性菌膜炎は数時間単位で病態が進行し、緊急の外科的デブリドマンが必須となる。
・デブリの遅延により死亡率上昇。
・「抗菌薬の反応性を見る」ことは進められない。

●Modified LRINEC score(蜂窩織炎/壊死性筋膜炎鑑別スコアリング)
PLoS One. 2015 Jul 21;10(7):e0132775
→high risk群のカットオフ値は9点
CRP:≧15(4点)>10(2点)
WBC:15000-25000(1点) 25000-(2点)
RBC:<400万(1点)  Hb:11-13.5(1点) 13.5-(2点)  Cre:>1.6(2点)
Fib:>750(2点)
痛み:強い(2点) 中等度(1点) 少し/無い(0点)
体温:≧38(2点) 37.6-37.9(1点)
頻脈:>100bpm(1点)
AKI徴候:あり(1点)

・皮膚所見は四肢の紅丘疹であり、初期は局所感染徴候からは考えにくい激痛を訴える。
・その他徴候としては、発赤の範囲以上に圧痛がある、握雪感などが挙げられる。
・バイタルサインは初期から不安定であり、症状は急速に進行し、皮膚の変色・水泡形成が起こり、運動障害・感覚障害が起こる。
・皮膚所見が明らかになる頃には病状は進行し、多臓器不全が進行している。

 

b. 急性膵炎後の感染性嚢胞
・壊死性膵炎に伴う感染性膵壊死は、感染が明らかであるにも関わらず早期の感染源コントロールが好まれない例外的な病態である。
・まずは経皮的・内視鏡的ドレナージを行い、必要に応じて壊死組織の切除を加えるステップアップ治療を行うことによって、即座に切除する群よりも安全な治療が望める。
(日本敗血症診療ガイドライン2016でも同様の記載)

 

[③感染源たるデバイスの除去]
a. CRBSI、CLABSI
Central Line Associated Blood Stream Infention
Catheter Related Blood Stream Infention
(参考:http://www.kameda.com/files/kameda_ja_general/medi_personnel/infectious_disease/pdf/07.pdf)

【診断】
・血管内カテーテル留置中の患者が発熱した場合には、 CRBSIを常に疑う。刺入部の炎症所見は特異度は高いが、感度が低いため(0-3%)、刺入部の炎症所見がないからといってCRBSIを否定することはできない。

・CRBSIを疑った場合には、末梢から2セットの血液培養を採取する。ただし、入院中の発熱でCRBSIだけが強く疑われる場合には、2セットのうち1セットをカテーテルから採血してもよい。
・しかしカテーテルからの血液培養採取はコンタミネーションが増えることに留意する。
・CRBSIを疑ってカテーテルを抜去した場合には、先端を5cm切って培養に提出する。必ず血液培養も一緒に培養に提出する。
・DTP(differential time to positivity):末梢血よりカテーテル血の血培が2時間以上速く生えると、DTP陽性となりCRBSIの診断となる。短期カテ感度89%/特異度87%。長期カテ感度90%, 特異度72%。
・重症敗血症や血流感染症を伴わない場合には、新規の発熱のみを理由としたルーチンでのカテーテル抜去はCRBSIの発生率から考えて無駄が多く推奨されない。
→しかしCRBSIが疑われた場合には早期抜去により予後が改善する

【治療】
・原因の多くがブドウ球菌であるので、抗菌薬はempiricalにはバンコマイシンを使用する。
・また、患者の重症度や鼠径部に留置されていたかどうかで、グラム陰性桿菌やカンジダのカバーを検討する。
・静注抗菌薬で最低2週間は治療を行う。起因菌が黄色ブドウ球菌であった場合には、原則4-6週の治 療が必要である。
・治療期間は、血液培養が陰性化した日からカウントする。
・黄色ブドウ球菌によるCRBSIの場合、カテーテルを抜去し、適切な抗菌薬を投与しても72時間以上菌血症もしくは発熱が続く場合には、心内膜炎の検索を行う。
・カンジダによるCRBSIの場合には、カテーテルを必ず抜去し、感染症科に依頼する。また眼科に依頼し眼内炎の検索を行う。
・抗菌薬ロック療法を考慮する
(参考:http://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_108.html)
→現実的にカテーテルの抜去が困難であり、かつ起因菌がカンジダと黄色ブドウ球菌以外で、CRBSIに伴う合併症(感染性心内膜炎や血栓性静脈炎など)がない場合には抗菌薬ロック療法の実施を検討する。
→抗菌薬全身投与よりもカテーテルを温存できる可能性が高い。
→ただし抗菌薬全身投与と必ず併用すること、また「ロック」なので、その間感染しているラインは(抗菌薬投与以外には)使用できないこと、など、非常に煩雑・不便になり、「どうしても温存したい場合」に適応は限られる。(悪性腫瘍で予後の限られた方のCVポート感染、など)。

【予防】
・鼠径部は感染のリスクや、血栓形成のリスクが高いため、原則として緊急時や他のアプローチが難し い例など以外には選択しない。
・通常の中心静脈カテーテルよりも末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)の方が感染率は低い。
・ルーメン数はなるべく少ない物を選択する。
・カテーテル刺入部は毎日感染の所見がないかどうかチェックし、挿入されたカテーテルは常に抜去できないかどうか検討する。

 

b. CA-UTI
Catheter Associated Urinary Tract Infection

・無症候性細菌尿は女性、高齢者、糖尿病患者でしばしば見受けられ、カテーテル抜去や抗菌薬投与の対象とならない
・CAUTIを発症した場合には、抜去することで症状改善率が高くなる。

 

[④持続的な汚染原因の除去]
a. 腹腔内感染症
・腹腔内感染症の予後を決定するのは、抗菌薬の選択というよりもソースコントロールである。
・IDSAのガイドラインではほぼすべての腹腔内感染症に対して感染源のコントロールを推奨している。
・治療開始が1時間遅れるごとに、30日死亡率が2.4%ずつ上昇する。

 

b. Clostridium difficile感染症
・CDIは軽度の下痢からイレウスや穿孔、腸管壊死をきたすような激烈なものまで幅広いスペクトラムを呈する。
・初発に対しては、メトロニダゾールによる治療を推奨
(バンコマイシンと非劣性、安価、VREのことを考えなくてよい)
・重症例、再発例、妊婦・授乳中、メトロで効果不良についてはバンコマイシンを推奨
・再発について、典型的には抗菌薬中止1-2週間後、長くて12週間後ごろにもみられる。
・再発率は20%程度あり、以前に再発エピソードがあればあるほど、再発のリスクが高くなる。
・便検査で陽性とならないこともあり、臨床的に再発を疑ったら治療を開始する
→再発自体は抗菌薬に対する耐性化ではない!
・逆に、無症状でトキシン陽性なだけの患者を治療してはならない!
・重症例のうち基準に該当する場合には大腸亜全摘が推奨される。

 

c. 自己弁の感染性心内膜炎
・弁破壊に伴う弁置換術と、感染源コントロールを目的とした手術がある
・早期手術における死亡率の低下が報告されている。
・適切な抗菌薬の投与にも関わらず、7-10日程度で感染の制御が出来ない場合(血液培養が持続して陽性)や、真菌あるいは耐性菌を原因とするものにおいて外科的知慮を考慮する。
(参考:http://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_107.html)

●Modified Duke’s criteria
○Major criteria→菌がいる所見
・血液培養陽性(①or②)※最低3セット採取が基本
①典型的な病原菌が異なる2回の血液培養で陽性
②IEを起こすが典型的でない菌が持続して陽性
12時間以上あけて採取した血液培養が2セット陽性
血培3セット陽性(※1最初と最後は1時間あけること)
4セット以上の場合、過半数が陽性(※1)
・心エコー所見
疣贅、膿瘍、新規の弁の逆流

○Minor criteria→菌がいる結果起こること中心
・心内膜炎の素因
・発熱>38℃
・血管減少
大血管塞栓、感染瘤、脳出血、結膜出血、Janeway lesion
・免疫減少
糸球体腎炎、Osler nodes, Roth斑、リウマチ因子
・major criteriaを満たさない血液培養陽性

※Janeway Lesionは細菌性塞栓、Osler結節は免疫複合体

○診断
・確定(Definite IE)
2 major, 1 major + 3 minor, 5 minor
・可能性(Possible IE)
1 major + 1 minor, 3 minor

※TTEとTEE→TTEの感度60%, TEE 90%
※初期TEEが陰性でも疑いが強い場合は3-5日後にTEE再検、もしくは臨床的な変化があったとき(心不全・新規塞栓)はTEEを再検する

〇治療
・緩徐発症なIEは起炎菌同定をまず行い最適治療を行う。どうしても待てないときは古典的にはABPC/SBT+GMを選択する。
・培養陰性のIEの治療は、特に決まった治療レジメンは記載されておらず、経過や患者背景などから推定される細菌を治療すべきである。
・例として、急性発症の場合はセフェピム+バンコマイシン、亜急性の経過の場合は、アンピシリン/スルバクタムが記載されている。臨床経過から、どの細菌の可能性があるかを検討して、それらを十分にカバーできる治療を行うことが重要である。

 

 

 

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【10.Septic DICの病態と評価】
・敗血症に伴う凝固線溶異常は多臓器不全の一因となり、予後不良である。
・しかし、DICという病態を治療対象としてとらえ抗凝固療法を行うことの有用性について、意見の統一はない。
・DICという病態に対して、治療をあまり行わない国もあるくらいである。

 

[DICの病態]
・DICは凝固優位型と線溶優位型、その中間の3つの病態に分けて考えると分かりやすい。
・敗血症で見られるDICは主に凝固優位型であり、DICのなかでも予後不良とされる。

http://www.3nai.jp/weblog/entry/22585.html

・敗血症罹患中の生体は凝固活性化状態となり血栓傾向をとるが、生理的範囲内であればそれ自体は悪ではない。
→”Immunothorombosis”という概念があり、つまり「凝固亢進しているが、DICというほどでもない状態」と捉えられるが、この状態の血栓は局所に「病原体を閉じ込める」役割を果たす可能性があり、生体防御的に働く可能性が考えられる。
→血栓が局所にとどまらず全身循環に拡散した状態では予後の悪化となる。
→無秩序・無判断に抗凝固治療を行ってしまうことによってあるべき生体防御機構を破壊してしまう可能性がある。

・敗血症性DICではPAI(Plasminogen Activator Inhibitor)が著明に増加している。
→つまり、t-PAがプラスミノーゲンをプラスミンに変換することができず、結果的に血栓溶解の過程が抑制されてしまう。
→これによって、D-dimerの上昇が軽度にとどまる。

 

[DICの評価と指標]


http://www.3nai.jp/weblog/entry/58176.html

< TAT >
・トロンビンとその代表的な阻止因子であるアンチトロンビン(AT)が、1対1結合した複合体を測定したマーカー。
・TATが正常値であればその1点のみでDICは否定される
・TATが高値であるということは、トロンビン産生量が多い、すなわち凝固活性化状態にあることを指す。

< FDP(Dダイマー)>
・プラスミノゲン→プラスミンに転換させる。
・このプラスミンは、血栓(フィブリン含有)を分解する。
・その時生ずる分解産物のことをFDP(Dダイマー)と言う。
・すなわち血栓傾向においてその代謝産物のD-dimerが上昇する。
・FDPやDダイマーが上昇しているというのは、凝固活性化によって血栓が形成されて、かつその血栓が溶解し、凝固活性化も線溶活性化も進行したということを意味する。

< PIC >
・線溶活性化の評価するためにはプラスミン産生量が分かれば良いが、それが無理なので、それを反映させるPICを測定する。
・DICにおいては、凝固活性化と並行して線溶活性化がみられ、PICも上昇する。

<アンチトロンビン, AT, ATⅢ>
・血管内皮に存在しているヘパリン様物質にATやが結合し、それによって、血栓ができないように、保護されている。
・アンチトロン ビンⅢとプラスミノーゲンはほぼ並行して動く
・肝疾患で蛋白合成が低下するとアンチトロンビンⅢ、プラスミノーゲン両者ともに低下する。
・AT-III活性はProteinC同様に病勢を反映し著明な減少を続ける。

<トロンビン・フィブリノーゲン・フィブリン>
・凝固活性化が進むと最終的にトロンビンというkey enzymeが形成される。
・トロンビンがフィブリノゲンに作用すると、フィブリノゲンはフィブリンに転換して血栓が形成される。
・血栓が形成されるとフィブリノゲンは低下する。

 

 

 

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【11.Septic DICの治療】
参考:
https://drmagician.exblog.jp/17521670/
https://drmagician.exblog.jp/24205718/
http://www.jseptic.com/journal/119.pdf

・抗凝固療法については、その正当性が十分に証明されていない。
・ただし、DICに対する抗凝固療法を積極的に行う本国において、重症敗血症の死亡率が他国よりも有意に低いという事実もある。
・ DICの治療としては、重要性の高い順に、基礎疾患の治療、抗凝固療法、補充療法、抗線溶療法が挙げられる。

 

<治療選択の実際 (1例)>
・DICの治療については、日本と海外で方針が大きく違う(日本→積極的に治療、海外→消極的)ことから、海外における臨床試験などについても、日本でそのまま適用されない例もある。実際に、リコモジュリンに対する海外の第Ⅲ相試験はseptic DICを対象にしておらず(PT-INRを指標とした「凝固障害」が対象となっている。)、そのまま日本の敗血症診療に適応させるのはいささか乱暴である。
・こういった事情から、DICの治療は「最低限のエビデンスを遵守しつつ」、経験的に治療せざるを得ない側面がある。(あるいは、経験的に「治療しない」ことを選択する)

したがって、以下は、あくまでも「治療の一例」にすぎない。

・軽症であれば抗DIC治療薬投与も不要で原疾患治療のみで十分。
・オプションとして、予防的ヘパリンの投与が考慮されうる。
・重症例(SOFA scoreが上昇傾向)に対して、活動性出血がないことを確認したうえで、rTMの投与が検討されうる。
・出血例においてrTMは使用できない。 FFPの投与を考慮する。
・AT製剤・合成プロテアーゼ阻害剤(フサン・ガベキ)については、現時点でエビデンスが全くなく、使用しないことが推奨される。

a. 抗凝固療法
・予防的投与の重要性を示唆した臨床試験が存在する。
・ヘパリン投与群で死亡率が低かったという報告もあるが、エビデンスレベルとしては弱い。

<投与例>
・18単位/kg/時間で維持投与を開始しAPTT1.5~2.0倍を目指す。
(高齢者では12単位/kg/時間を考慮)
・すでに血栓の存在が示唆される場合には80単位/kg(5000単位)を静注してから維持投与を開始する。
・20000単位+NS 30mLで、1.8mLで開始する。
(体重50kgの時の18単位/kg/hrに相当)


http://maruta-gim.wixsite.com/maruta-gim/anticoagulant

・ATⅢ<70%の例でアンチトロンビンIII製剤を補充しながらヘパリンを投与する。
・通常、ヘパリン併用時はATⅢ製剤を1日1回1,500単位(成人)または30単位/kgを静注または点滴静注する。
(http://www.jsth.org/glossary_detail/?id=360)
・ただし、抗凝固療法を行う際には、常に出血リスクを評価しながら。

 

b. rTM トロンボモジュリン、リコモジュリン
(本項はソース元が単一であり、解釈のbiasを排除しきれていない)
https://drmagician.exblog.jp/24205718/
https://drmagician.exblog.jp/27463393/
https://drmagician.exblog.jp/22868432/

・rTMの有効性に関する海外PhaseⅢ試験(SCARLET trial)の結果で、有用性が否定されているが、これには軽症例や、単なる敗血症性凝固障害(あるいはImmunothombosisの範疇)の例が多数登録されていたことから、その有用性が過小評価されている可能性がある。
・実際に、DICではない敗血症患者に対するDIC治療薬投与が予後を改善しないことは以前から指摘されていて、日本の実臨床でも軽症例に対してはrTMを投与しないことが多い。
・一方で、敗血症性DICにサンプルを限った国内の試験(JSEPTIC-DIC Study)において、重症敗血症および敗血症性ショックの治療を受けるために入院した成人患者のデータを後ろ向きに解析し、 rTM投与と低い院内全死亡率との間に有意な相関があることを示した。
・重症度が高い患者集団ほどrTMの死亡リスク改善効果が得られる可能性がある
(私見)・以上のことから敗血症性DICを呈し、臓器障害が進行している重症例に限っては、rTMは投与され得るものと考える。

 

<実際の投与方法>
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00054575

・禁忌
・頭蓋内出血、消化管出血、肺出血
・妊婦

・投与方法
・通常、成人には1日1回380U/kgを約30分かけて点滴静注する。
(連続5日間程度は保険診療として認められている)
・1バイアルを生食2mlに溶解後、380U/kgとして0.06ml×体重kg=必要量ml

 

c. 輸血補充療法
(参考:SSCG2016)
UpToDate ”Clinical features, diagnosis, and treatment of disseminated intravascular coagulation in adults”

<血小板>
・明らかな出血がなければ血小板数が < 10,000 /mm3 で予防的な血小板輸血を行うことを提案する。
・また,出血のリスクが明らかに高い場合は < 20,000 /mm3 で血小板輸血を行うことを提案する。
・活動性出血,手術, 侵襲的介入を行う場合は高めの目標値( ≧ 50,000 /mm3 )にすることが望ましい。
計算式: 0.054×患者の体重(kg)×上昇を期待する血小板数(万/μl)
例:体重60kgの患者で血小板数を3万/μl上げたいとき
0.054×60×3=9.72  約10単位

<FFP>
・重篤な出血とプロトロンビン時間( PT )または活性化部分トロンボプラスチン時間( APTT )の著明な延長,もしくはフィブリノゲンが 50 mg/dL 未満の重症出血患者では,新鮮凍結血漿( FFP )などの凝固因子の補充をすべきである。

・ATⅢ<50%の重症DIC(SOFA scoreが上昇傾向)にはFFPの投与を検討する。

 

< AT-III製剤>
・Afshariらによる重症患者を対象にしたコクランレビューによると、AT製剤の投与は転帰改善に対する効果を認めなかった。
・出血の合併症は有意に増加させた。
・その他の敗血症を対処としたRCT6編においても同様に有用性は認めなかった。
・ヘパリン非併用/併用どちらにおいても、有用性はなし
(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26858174)

・(私見)以上より、AT製剤の投与に対しては否定的な立場をとるが、もしも実臨床にて投与を考慮する場合には下記のように行う。

・重症DIC群でATⅢ活性50-69%であればAT 1500単位/日を追加,
・ATⅢ活性<50%であれば、AT 3000単位/日+FFP投与する。
・非重症DIC群であればATⅢ活性50-69%では他薬剤追加は不要であり、AT活性<50%ではAT 1500単位/日を投与する。
・出血例ではrTMは使用しないがATは使用でき、重症例ではrTMやATを積極的に使用し、万が一出血してもトランサミンの使用は禁忌となる。

 

 

川良健二

 

その他の巻についてもこちらをご覧ください↓

INTENSIVIST 重要項目まとめ

 

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