重症感染症(INTENSIVIST VOL.2NO.1)の重要項目まとめ

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目次

1. 【フォーカス不明の重症発熱アプローチ】
2. 【意識障害と感染症】
3. 【細菌性髄膜炎】
4. 【ウイルス性脳炎】
5. 【呼吸器症状と重症感染症】
6. 【腹痛と重症感染症】
7. 【下痢と感染症】
8. 【皮疹と重症感染症】

 

 

 

その他の巻についてもこちらをご覧ください↓

INTENSIVIST 重要項目まとめ

 

 

 

【フォーカス不明の重症発熱アプローチ】

・ICUの発熱患者において、
[血液培養2セット・喀痰培養・グラム染色・胸部X線・尿検査・尿培養]はほぼ前例に必須

 

[発熱に至る経緯から分類する]
① 入院前に発熱したもの
② 一般病棟入院患者が発熱、状態悪化によりICU入室
③ ICU入室中の患者がそこで発熱

 

① 入院前に発熱したもの
・急性の経過をとり、ICU入室を必要とする発熱疾患は大多数が感染症ということになる。その多くは肺炎・髄膜炎といった市中感染症といえる
・肺炎の起因菌で多いのは、肺炎球菌・インフルエンザ菌・モラクセラカタラーリス・マイコプラズマ・クラミジア・レジオネラ
・海外渡航歴があれば、マラリア・チフス・SARSを視野に
・免疫不全患者ではPCPを視野に
・結核の否定も忘れない
・非感染性で急性の経過をたどるものには、TENや血球貪食症候群などがある。

 

② 一般病棟入院患者が発熱、状態悪化によりICU入室
・鑑別疾患はかなり少ない
・感染症であれば肺炎・UTI・CR-BSIによるsepsis
・非感染性の原因であれば、膵炎・肺塞栓・心筋梗塞など
・院内感染症を否定できないICU入室患者は培養採取のうえで広域抗菌薬を投与する
・最大スペクトラムとしてはMEPM+VCM+MCFG

 

③ ICU入室中の患者がそこで発熱
・問診が不可である場合が多いが、まずは身体診察を丁寧に行う
・血栓性静脈炎・褥瘡感染・前立腺炎などは、身体診察により診断にたどり着く可能性が高い
・敗血症に合併する胆嚢炎にも注意。総胆管が関与していなければ肝胆道系酵素は上昇しないこともある。
・薬剤熱
・抗菌薬・抗痙攣薬を背景とすることが多いが、どんな薬剤でも起きうる。
・悪寒戦慄やCRPの上昇など感染症likeな徴候がみられることがあるので、薬剤熱を否定してはならない。
・比較的徐脈(発熱に比して脈拍数上昇がみられない)に代表されるように、バイタ
ルサインは整っていることが多い

参照:亀田感染症ガイドライン

 

 

 

 

【意識障害と感染症】

・髄膜炎、脳炎などの中枢神経系感染症でなくても、尿路感染症・肺炎・カテ感染など、全身の感染で意識障害をきたしうる。
・(追記)現在、敗血症診断のための有用なツールとして、qSOFAスコアが用いられているが、その3項目のうち1項目も意識障害の有無となっている。

・qSOFAスコア
a. 血圧異常(収縮期血圧90mmHg以下)
b. 意識障害(GCS14点以下)
c. 呼吸異常(呼吸数22回異常)

2項目以上陽性で敗血症の可能性が高まるが、ポイントはGCS14点(15点満点)以下で陽性となる点である。

[原因の診断]
・まず意識障害があると診断したら、本人だけでなく家族や病棟看護師からも病歴を取る。
(高齢男性だと認知症と混同されることが良くある!)
・低血糖、VitB1不足、麻薬・BDZ過剰などすぐに治療可能な原因を除外する。
・神経学的所見の有無から脳血管障害や脳炎・髄膜炎を除外する。
→髄膜炎の除外のためには腰椎穿刺をためらってはいけない。

 

 

 

 

【細菌性髄膜炎】

[症候]
・古典的3徴は発熱・項部硬直・意識障害であるが、全て揃うのは44%にすぎない
・受診時の頭痛は87%、項部硬直は83%だが、高齢者にはこれらの症状がなく、意識変容のみで来院することもある。
・項部硬直の感度30%、jolt accentuationの感度97%
→jolt accentuationを使って除外を
・脳圧の亢進から動眼神経麻痺や外転神経麻痺が生じることもある。

[検査]
・血液培養
・髄液検査

a. 白血球数
通常、好中球優位に上昇(100-10000/mm2)する。髄膜炎の診断かつ白血球の上昇が軽度の場合予後不良因子となる。

b. グルコース濃度
髄液グルコース/血清グルコース < 0.4で異常
感度80%、特異度98%

c. タンパク濃度は上昇

d. グラム染色
特異度97%であり診断に極めて有効
ただし、抗菌薬投与後の検査で陽性率は20%まで低下

e. 初圧
90%の患者で初圧>180mmH2Oとなる

・ただし、これらの検査所見には例外が多いので、その他の情報から疑われる場合には細菌性髄膜炎として治療を開始する。

 

[腰椎穿刺とCT]
頭蓋内圧亢進時に腰椎穿刺が禁忌となることから、穿刺前にCTを撮りがちだが…
下記条件で積極的に省略する


https://square.umin.ac.jp/massie-tmd/netsuzutsu.ppt

・CT撮影に時間がかかる場合には、血液培養のみ採取し抗菌薬の投与を開始する。

 

[治療]
・病着後、抗菌薬の投与が遅ければ遅いほど予後が悪い
・少しでも細菌性髄膜炎の可能性がある場合にはすぐに治療を開始し、その後の培養結果で方針を決定する。
・CT撮影に時間がかかる場合には、血液培養のみ採取し抗菌薬の投与を開始する。


http://www.neuroinfection.jp/pdf/guideline101.pdf

 

[コルチコステロイド]
・細菌による脳の障害もあるが、患者の免疫反応により障害されることも後遺症の原因になる。
・抗菌薬投与15-20分前にデキサメタゾン10mg q6hr 4daysを行うと神経学的後遺症の割合および死亡率に改善を認めた。(ただし肺炎球菌のみ)
→肺炎球菌以外が起炎菌と判明したら投与終了する
→すでに抗菌薬を投与開始されていたらステロイドは投与しない   ことが推奨される
・(追記)インフルエンザ桿菌・肺炎球菌性髄膜炎でステロイド投与に効果あり。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/33/2/33_135/_pdf)

 

 

 

 

【ウイルス性脳炎】

・純粋な髄膜炎の場合、脳機能障害は伴わないが、多くの脳炎患者はびまん性に脳皮質障害を伴っているため、意識の変容・運動感覚障害・行動異常・痙攣などが出現する

[原因]
・ヘルペスウイルスが多い
・感染性脳炎の他にも、感染後・ワクチン接種後のADEM(急性散在性脳脊髄炎)やインフルエンザ脳症があるが、原因不明が60%。

[疫学情報]
・動物との接触・昆虫との接触、海外渡航歴など

[検査]
・髄液検査
リンパ球優位の細胞数上昇、タンパク質上昇
グルコース濃度は正常

・ウイルスPCR検査
ヘルペス、エンテロウイルス

・MRI
側頭葉の異常はHSVをヘルペスウイルスを示唆する

[治療]
ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスにはアシクロビル
CMVにはガンシクロビル
ADEMにはステロイドパルス

 

 

 

 

【呼吸器症状と重症感染症】

・患者が軽症で話ができる状態であれば、病歴聴取の有用性は非常に高く、56%~82%の診断は判明する。
・身体所見(9~17%)や検査(9~23%)はそれを確認するのみである。
・症状の発症様式・時間経過・程度・正常・増悪/寛解因子について聴取する

[呼吸困難]
① 起坐呼吸→心不全/肺水腫、COPD、神経疾患による呼吸不全
② 扁平呼吸→心外膜炎(臥位で楽になる呼吸)
③ 夜間呼吸困難→COPD、喘息、心不全/肺水腫、GERD

全体の9割は①心疾患②呼吸器疾患③心因性/過換気④GERD⑤廃用のどれかである。

・呼吸困難のある感染症でもfocusは呼吸器とは限らない!
→重症感染症の代謝性アシドーシスを呼吸性に代償する場合
→感染性心内膜炎では呼吸困難・発熱・喀痰・浸潤影あり

・呼吸困難を伴う咽頭痛・発熱は気道緊急を疑う!
→嚥下障害、つばも飲み込めないような状況では急性喉頭蓋炎、咽後膿瘍、扁桃腺周囲膿瘍を疑い、挿管まで見据える

・見逃すとイタイ疾患
→妊娠・甲状腺機能亢進症・貧血

 

[喀血]
・大量喀血か大量でないかによって原因が異なる
・大量喀血は24-48時間以内に600mL以上の喀血
・大量喀血は肺結核・気管支拡張症・肺膿瘍で60%を占める。ほかに癌や心不全の頻度が高い
→大量喀血時の死亡原因は出血でなく、気道閉塞や呼吸不全
→気道確保を最優先
・その他、喀血の原因は
肺炎、寄生虫・真菌症、血管炎・膠原病など

 

[喘鳴]
・ほぼ閉塞しかかっている気道が震えることが機序と言われている。
・喘鳴があるからといって喘息とは限らない
・ただし吸入気管支拡張薬に対する反応を見て可逆性を評価することは適切
・喉頭蓋炎・咽後膿瘍、異物誤嚥、喘息、心不全、アナフィラキシー
(緊急性の高い疾患)

 

[重症市中肺炎]
・重症度予測ツール


https://drmagician.exblog.jp/16182272/

・症候として発熱は80%にみられるが、それよりも食思不振(87.5%)の方が頻度高い
・empiricな初期治療としてはCTRX+AZM
・起炎菌が判明したら、菌ごとにde-escalation


(www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~ict/koukinyaku/koukinyakumanual.htm#B2

・レジオネラ肺炎はβラクタムに感受性がないことから初期治療を外さないように
→尿中抗原

 

 

 

 

【腹痛と重症感染症】

[腹痛の基礎的知識]
① 内臓痛:関空臓器の拡張、進展などによる局所不明瞭な痛みで、正中線上に自覚することが多い
・Treitzまでの臓器(胃十二指腸・肝臓・膵臓)は上腹部の痛み
・Treitzから肝湾曲部までの臓器(小腸・虫垂・大腸近位部)は臍周囲の痛み
・それより遠位(大腸遠位部・尿路泌尿器)は下腹部の痛み

② 体性痛:障害された臓器に隣接する腹膜の直接刺激により生じる鋭く局在明瞭な痛み
③ 関連痛:障害臓器の求心性繊維が、別の臓器の求心性繊維と合流することで起きる
右季肋部は右肩、心臓・膵臓は左肩に

 

[疼痛部位と疾患]

(https://www.jslm.org/books/guideline/05_06/048.pdf)

 

[血管性病変による腹痛]
① 急性腸間膜虚血
・塞栓症50%, 血栓症25%, NOMI 20%
・塞栓のほとんどは大動脈からの分枝が鋭角な上腸間膜動脈で起きる
・NOMIは非閉塞性腸間膜虚血のことであり、血管に閉塞がないが腸管に虚血が起きる
心拍出量の低下や、腸管酸素需要量の亢進による(心不全、ショック、透析、薬物)

② 虚血性腸炎
・最も頻度が高い腸管虚血である。腸管が壊死することはまれで、2週間程度で回復する。
・特発性がほとんど
・側副血行路の少なさから、好発部位はS状結腸・脾湾曲部が挙げられる。

 

[腹腔内感染と抗菌薬]
・総論
a. 市中感染で中等症までの症例ではAPBC/SBTでよい。院内発症の場合には耐性グラム陰性桿菌を考慮する必要がある。嫌気性カバーにはメトロニダゾール。

b. カンジダは陽性でも治療の必要はない。ただし、免疫不全・術後腹腔内感染・再発性腹腔内感染ではその限りではない。

・ソースコントロール
a. 膿瘍や感染した体液のドレナージ
b. 壊死組織のデブリ
c. 細菌による汚染のソース修復
d. 解剖と機能の回復
→腹膜・横隔膜はリンパ管を通して静脈系に容易に到達するため、外科的コントロールが必要
→胆嚢・胆管などは経皮的ドレナージ/ERCP可能

・虫垂炎
a. 壊死・穿孔・膿瘍・腹膜炎がなければ、抗菌薬の投与は手術時の予防投与のみでよい。
b. 合併症のない急性虫垂炎患者で、最初に抗菌薬治療を受けた人々の5年間の再発率
は39.1%で、抗菌薬療法は手術の代替治療法として有用なことが示唆されている。
ただし合併症がある場合(虫垂結石、穿孔、膿瘍、腫瘍)は除外されている
(APPAC試験)

・急性膵炎
予防的抗菌薬投与についてはcotroversialであり一定の見解が得られていない
(追記:最近のメタアナリシスでは、予後改善に否定的なデータが多く、膵壊死を伴う重症急性膵炎に対する抗菌薬の予防投与は推奨されていない)
https://minds.jcqhc.or.jp/n/cq/D0002923

・CD腸炎
抗菌薬の使用歴が最大のリスクファクターであり、10週間前までさかのぼる必要がある。
治療薬である、バンコマイシンやメトロニダゾールでさえリスクとなる。

・骨盤内炎症性疾患(PID)
a. 虫垂炎・憩室炎などとの鑑別が難しいことがある
b. PIDの患者は虫垂炎よりも受診が遅い
c. 帯下の増加、性器出血の増加を訴えることが多い。腹部全体や両側付属器周囲の圧痛を認める
参考:とても良くまとまっています↓
亀田感染症ガイドライン:PID

 

 

 

 

【下痢と感染症】

① 市中・旅行者下痢症
② 医療関連下痢症
③ 免疫不全の下痢症
の3つに大別する。

a. 市中・食中毒

b. 旅行者下痢症
多くは腸管毒素原性大腸菌。そのほか赤痢菌・サルモネラも

c. 免疫不全者
ランブル鞭毛中、クリプトスポリジウム、真菌など。
特に AIDS 患者では、Mycobacterium 属、特定のウイルス(サイトメガロウイルス等)男性同性愛者の場合、直接肛門から感染した病原体(淋菌、梅毒、クラミジア)などを考えなければならない。

 

[身体所見]
・腸管運動音・腹部膨隆・腹膜刺激症状・口腔内潰瘍・肛門周囲病変などに注意。
・消化器症状を呈する全身性の感染症として、敗血症・レジオネラ、インフルエンザ、免疫不全のサイトメガロが挙げられる。
・その他、中毒、甲状腺機能亢進症やクリーゼ、副腎不全・DKAでも下痢を呈する。

 

[炎症の有無の軸]
・炎症の有無・起因菌は便中白血球により推定する。キャンピロ・サルモネラで陽性となる。
・炎症性腸疾患や虚血性腸炎、憩室炎でも陽性となる。
・ウイルス性下痢やコレラ・ビブリオでは陽性とならない

 

[感染性下痢症に対する抗菌薬の適応]
・抗菌薬による治療の利点が証明されている病原体は赤痢菌とキャンピロだけ
・キャンピロは便グラム染色で特異的ならせん菌をみつけることで感度89%、特異度99.7%で診断できる。便培養の手間を省くことができる。
・ただし、”多くの場合自然に軽快するため、原則使用しない。感染性下痢症の上位を占める、病原性大腸菌、Campylobacter 、非チフス・サルモネラであっても、抗菌薬は不要であることが多い。”
http://www.kameda.com/files/kameda_ja_general/medi_personnel/infectious_disease/pdf/12.pdf

 

[CD腸炎と抗菌薬]
・初発に対しては、メトロニダゾールを推奨
(バンコマイシンと非劣性、安価、VREのことを考えなくてよい)
・重症例、再発例、妊婦・授乳中、メトロで効果不良についてはバンコマイシンを推奨
・重症例とは、ICU症例や2項目陽性(60歳以上・BT>38.4・Alb<2.5・WBC>15000)
・治療に反応しない重症例で乳酸値>5mmol/L以上で大腸切除を考慮するという報告もある
(参照:http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/kansen/data/04_cd_chouen.pdf

・再発について、典型的には抗菌薬中止1-2週間後、長くて12週間後ごろにもみられる。
・再発率は20%程度あり、以前に再発エピソードがあればあるほど、再発のリスクが高くなる。
・便検査で陽性とならないこともあり、臨床的に再発を疑ったら治療を開始する
→再発自体は抗菌薬に対する耐性化ではない!
・逆に、無症状でトキシン陽性なだけの患者を治療してはならない!

 

 

 

 

【皮疹と重症感染症】

・皮疹を伴う発熱性疾患は多く、また生命に関わる重症感染症の初期徴候であることもある。
・皮疹を分類することで、重症感染症の鑑別が可能となるため、重要である。

[代表的な皮疹の種類]
・原発疹

① 斑
a. 紅斑
紅色の病変。ガラス板法で消退する。
b. 紫斑
紫紅色の病変。ガラス板法で消退しない。
点状出血<3mm, 斑状出血>3mm と分類される。

②丘疹・結節・腫瘤
隆起した病変。
丘疹<1cm,  1cm<結節<3cm,  腫瘤>3cm

③ 水泡
透明な水溶液の内容物を含む。

④ 膿疱
膿性の内容物を含む

⑤ 膨疹
一過性の限局性浮腫。協会明瞭な隆起した病変

・続発疹
① 鱗屑
角質片が皮膚に蓄積・付着した状態

② 痂疲
角質・漿液・壊死組織が乾燥し、皮膚に付着した状態

③ 表皮剥離
掻破や外傷による表皮の線状欠損

④ びらん
表皮の欠損。瘢痕を残さず再生

⑤潰瘍
真皮から皮下組織までの欠損。瘢痕を残して再生

 

以下、重症度/頻度などの点から抽出した疾患について記載

[敗血症性ショック(肺炎球菌・黄ブ菌・緑膿菌)]
・敗血症性ショックに伴う皮疹として、四肢の抹消壊疽を電撃性紫斑病という
・髄膜炎菌感染症・脾摘後重症敗血症・黄ブ菌による敗血症・好中球減少時の緑膿菌感染などにみられる。DICでもみられる。
・口唇・下肢・耳鼻・会陰部にみられる点状出血や紅斑から始まり、急速に癒合し抹消壊疽に変化していく。
・原則として敗血症の治療を進め、必要に応じて外科的処置を行う。

 

[感染性心内膜炎]
・心雑音を伴う皮疹・発熱患者ではかならず鑑別に入れる
・(追記)発熱患者の脳梗塞でも鑑別にいれる
・原因微生物として黄ブ菌が主に問題となる。
・皮疹としては、有痛性丘疹であるosler結節・微小塞栓(結膜・口腔出血斑・爪下出血斑)などがあげられる。

 

[壊死性菌膜炎]
・筋膜と皮下組織が中心の病変で急速に進行する深部軟部組織感染症。外科的切開・デブリが必要。タイミングが遅れると死亡率が高くなる
・肝硬変・DM・悪性腫瘍などの免疫不全患者を背景として、外傷や海産物摂取を契機に発症する。好気・嫌気混合感染が多い。健常者に起きた場合にはA群溶結連鎖球菌が多い。
・クロストリジウム属や腸内細菌でガス産生菌によるものはガス壊疽と呼ばれる。
・皮膚所見は四肢の紅丘疹であり、初期は局所感染徴候からは考えにくい激痛を訴える。
・その他徴候としては、発赤の範囲以上に圧痛がある、握雪感などが挙げられる。
・バイタルサインは初期から不安定であり、症状は急速に進行し、皮膚の変色・水泡形成が起こり、運動障害・感覚障害が起こる。
・皮膚所見が明らかになる頃には病状は進行し、多臓器不全が進行している。
・蜂窩織炎との鑑別にはLINECスコアを用いる

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsswc/5/1/5_22/_pdf/-char/ja

 

[毒素性ショック症候群(TSS)]
・突然発症の高熱・悪寒戦慄・嘔吐・下痢、全身筋痛の症状にびまん性の紅丘疹を伴う場合にTSSを疑う。
・原因不明のショック、多臓器不全で鑑別にいれる
・発症の原因は
術後局所・創部感染、外傷、耳鼻科手術、鼻出血のガーゼパッキングなどが挙げられる。
・黄ブ菌が起炎菌の場合、皮膚・粘膜充血や日焼け様のびまん性に広がる紅丘疹が特徴。手掌及び足底にも広がる。血液培養は通常陰性。
・連鎖球菌が起炎菌の場合、壊死性菌膜炎を合併することが多い。若年者の高熱、皮膚局所の激痛で疑う。紅丘疹は見られない。血液培養は60%で陽性となる。
・いずれの起因菌についても、抗菌薬はCEZやペニシリンに加えて、毒素産生を抑制する目的でCLDMを併用する。

 

[SSSS]
ブドウ球菌性熱傷様症候群
・ブドウ球菌のうち5%が表皮剥奪毒素を産生し、SSSSの原因となる。
・急速に進行する表皮剥奪が全身性に起きるが、粘膜障害は起こさない
・新生児・幼児にみられる
・成人では、腎不全・免疫不全・リンパ腫などの基礎疾患に合併する
・2度熱傷に準じた全身管理を行う。

 

川良健二

 

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