不整脈(INTENSIVIST VOL.1NO.4)の重要項目まとめ

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目次

1. 【不整脈治療の総論】
2. 【Naチャネル遮断薬】
3. 【Kチャネル遮断薬:アミオダロン】
4. 【β遮断薬】
5. 【心房細動】
6. 【集中治療と心房細動】
7. 【心室性不整脈】

 

 

 

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INTENSIVIST 重要項目まとめ

 

 

【不整脈治療の総論】

・不整脈を心電図上から消し去るという美容整形に走ってはいけない。

・抗不整脈薬は不整脈の原因を治しているわけではなく、抗不整脈的に働くのか催不整脈的に働くのかはあいまいである。

・不整脈の治療はその出現が生死にかかわる場合か、それによって引き起こされる動悸・めまいや心不全症状などが著しくQOLを損なう場合に意味をなす。

・不整脈治療の根本はその、原因を取り除くことである。
(ex. 急性虚血に伴って出現した心室性不整脈の根本治療は虚血の改善であるし、甲状腺機能異常による心不全、心房細動があれば根本治療はホルモン療法である。)

 

 

 

 

【Naチャネル遮断薬】

・Ⅰ群抗不整脈薬に分類される

[Naチャネル遮断薬の使い分け]
・Naチャネルに結合してから解離するまでの時間の長さによって、a, b, cと細分類がある。
・長さが長い順にc>a>bとなり、この順を疑似的に薬理作用の強さの順と考えてよい。

つまり薬理作用の強い順に

Ic:タンボコール(フレカイニド)、サンリズム(ピルジカイニド)など
Ia:アミサリン(プロカインアミド)、シベノール(シベンゾリン)など
Ib:リドカイン、メキシチール(メキシレチン)など

と表現することが出来る。

ただし、薬理作用が強いほど、陰性変力作用やQT延長の効果も強くでてしまうため、心機能低下例に対してIc群を第一選択では使わない。

Ib群では、それらの副作用が強くない変わりに薬理作用も乏しい。

心機能低下例については、Ia群から使っていき、モニタリングをしながら効果が乏しければIc群へ切り替えるという考え方もあるが、そもそも心機能抑制のないKチャネル遮断薬(アミオダロン)に切り替えるという考え方もある。

[Naチャネル遮断薬の代謝]

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/32/3/32_428/_pdf

・アプリンジン・プロパフェノンについては、投与量に対して血中濃度が非線形的に急上昇するので注意

[CAST study]
心筋梗塞後の無症候性あるいは軽度症候性の心室性不整脈に対して、Naチャネル遮断薬(フレカイニド、エンカイニド)を投与した結果、偽薬群と比べて突然死の頻度が高かった。

 

 

 

 

【Kチャネル遮断薬:アミオダロン】

・アミオダロンは心筋梗塞発症早期への導入で突然死を有意に減少させた。
・β遮断薬との併用でさらに効果が上昇する可能性がある。
・Kチャネルだけではなく、β受容体遮断作用などを有するマルチチャネル抑制効果を持つ
・下記表のように、心房細動において、他の治療が奏功しない場合に経口での投与が考慮される。


http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf

(追記:RACEⅡ試験により、永続性AF患者における緩やかなレートコントロール(HR<110)の有用性は,厳格なレートコントロール(HR<80)に劣らないことが示されている。)

 

[アミオダロンを実際に使う]
・洞調律の際にはレートをそこまで下げない
・AF時には下げる。除細動も期待できる。洞調律維持も期待できる。
・心筋自体の収縮能は低下するが、血管拡張作用があり後負荷の軽減により心不全では拍出量を減らさない。
・sustainVT停止後の予防として、心機能低下例ではアミオダロンが第一選択となる。
・心機能の低下した血圧低下など重症疾患に合併した心房細動において、アミオダロンは心拍数を低下させ、かつ血圧上昇をもたらす
・肝腎機能低下に伴う用量調節が不要
・蘇生(VF, pulselessVT)の際には、アミオダロン300mgを静注する。
・血行動態の不安定なVTの際は下記のごとく使う
・効果が出なければ、繰り返し追加投与が必要な場合がある。
・急性期での静注療法はなるべく速やかに経口療法(800mg/dayなどから始める)に切り替える。
・副作用として徐脈・低血圧をきたすことがあるが、通常は減量・中止で対処できる。


https://e-mr.sanofi.co.jp/-/media/EMS/Conditions/eMR/products/ancaron/downloads/AMD_17_06_1298.pdf

 

 

 

 

【β遮断薬】

[静注]
短時間作用性のランジオロールは5γくらいから投与開始する。血圧低下作用は比較的少ない。β1選択性は高い。

 

[内服]
・メインテートは心拍数低下作用が強く、さらにβ1選択性が高いことから、呼吸器疾患を持つ患者に対しても使用しやすい。
・血行動態がやや不安定である場合には、α作用も併せ持つアーチストを使用する。α遮断作用により急激な心拍数や血圧の低下を和らげる。ただしβ1選択性はない。

 

 

 

 

【心房細動】

[心房細動の総論]
・主に持続性心房細動を対象とした、rate control vs rhythm control の試験では、全てにおいてrate contorolの非劣性が示されている。(予後においてrate control はrhythm controlに負けない)

 

[心房細動の分類]
① 発作性心房細動:心電図上、初めて確認されたもの。真に初発であるとは限らない。
② 持続性心房細動:7日を超える心房細動
③ 長期持続性心房細動:1年を超える心房細動
④ 永続性心房細動:電気的あるいは薬理学的に除細動不能な心房細動
→CHADS2スコア1点以上で分類に関わらず抗凝固療法の開始を検討する。

 

[心房細動の治療]


http://www.jseptic.com/journal/29.pdf

アミオダロンは保険上、肥大型心筋症に合併した心房細動のみに適応であり、欧米のガイドラインに比し、心房細動のコントロールについてそれほど強く言及がないが、rhythm, rateともにcontrolの効果は確立されたものがある。

 

[ジギタリスの使用まとめ]
・AcuteAFのrate control:ジギは第一選択ではない。しかし収縮力が低下している場合ですぐに心拍数をさげなくても良いときには使用を考慮する。
・ChronicAFのrate control:β遮断やCa拮抗でコントロール不良の場合に考慮する。
・心不全治療:β遮断やACE阻害で治療しているにもかかわらず症状がある心不全患者に対し、症状改善や入院火度を減らす目的にジギを考慮する。
・血中濃度:12-24hr後に行う。特に心不全患者では1.0ng/mLを超えると死亡率が上がる。
・ジギタリスの副作用:食欲低下、譫妄、徐脈・頻脈性不整脈、PVCの頻発など。

 

 

 

 

【集中治療と心房細動】

・ICU入室中の患者12%に持続性不整脈が観察された。
・ICU入室中の患者6.5%に心房細動が観察された。
・リズムコントロールに対するレートコントロールの非劣性はあくまでも永続性AFの外来患者のもの。
・集中治療領域での心房細動についてのリスクファクター・治療については下記参照


http://www.jseptic.com/journal/102.pdf

・集中治療領域での心房細動の治療については、そもそもの状態が悪いことやpolypharmacyの問題もあることから、低血圧や催不整脈などの有害事象出現の可能性を鑑みつつ、行う。
・治療を行う際は、新たに出現したAFに対して血行動態が不安定であればDCを考慮
そうでなければまずはrate control±抗凝固、管理不能であれば抗不整脈薬やDCを考慮
→心房細動患者のもっとも強力な予後規定因子は脳梗塞の発症であるから、除細動は慎重に。
→DCの適応としては、全身状態が非常に悪く心不全が重度である、または脳梗塞のリスクが非常に低い場合

[早期の除細動を支持する根拠]
・7日以上継続した心房細動は自然停止することが少ない
・発症から24-48時間以内であれば血栓はほとんど形成されない。

[早期の除細動を支持しない根拠]
・初診時の心房細動は持続時間が不明。抗凝固の有無も不明
・経食道心エコーでも血栓検出は限界がある
・全身状態が悪化している場合には除細動されづらく、再発の可能性も高い。血栓形成の可能性も高い。

 

 

 

 

【心室性不整脈】

[心室期外収縮]
・症状がなく、頻度が全心拍数の5%以下の場合には経過観察でよい
・しかし、狭心症や心筋梗塞などの基礎疾患がある場合にはβ遮断薬の使用を考慮

[心室頻拍]
・まずは患者の全身状態を把握する(意識状態、血圧)
・収縮期血圧90mmHg以上で意識が保たれている場合には薬物治療を行う
・90mmHg未満では鎮静後のDCを検討する。
・意識低下があれば緊急DC
・薬物治療はアミオダロンがもっとも効果的であると考えられる。
・リドカインは急性心筋梗塞もしくは虚血の患者に認めた持続性の心室頻拍に対しては効果が期待できるかもしれない

[心室頻拍と上室性頻拍]
・wide QRSを見ることで、おおざっぱには心室性不整脈ということが出来るが、上室性油袋の調律でもwide QRSは起きうる。
・一般に上室性頻拍(SVT)に比べ心室頻拍は血行動態に与える影響が多く、VF・CPAに移行しやすいが、bpm<150以下のslow VTでは自覚症状がないこともある。
・上記二つは治療法が違うため、鑑別が重要となる。

[VTとSVTの鑑別]
・心筋梗塞の病歴があれば98%の確率でVTと考えてよい
・そのほか、突然死の家族歴や拡張型心筋症、QT延長症候群などの既往歴があればVTの可能性が高い
・下記心電図所見も参考にはなるが、虚血性心疾患がらみの場合には全てVTとして対応する、というのが簡潔でよい。

・心電図所見では以下の場合にVTを考える
① 房室解離(wide QRSと別にP波が出現)
ただし、QRSの前に”規則正しく” P波が出ている場合はSVTの所見
② 極端な右軸変異
③ V1誘導で陽性の振れ(右脚ブロック波形)かつ140msec以上
あるいは、陰性の振れ(左脚ブロック波形)かつ160msec以上の場合
④ 波形の振れがV1-V6ですべて陽性or陰性
などがある。

[Torsade de Pointes(TdP)]
・先天的・後天的QT延長(440msec以上とするものが多い)に関連する多形性の心室性不整脈である。
・リスクファクター


new.jhrs.or.jp/public/lecture/lecture-2/lecture-2-b/

 

川良健二

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