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こんにちは。川良です。
今日は巷を賑わせることの多いオンライン診療について述べたいと思います。
在宅医療とは、そもそも通院が困難である方に向けて提供される医療であることから、自宅に居ながら診察を受けることのできるオンライン診療との相性は抜群に良いと思われますが、その適応や診療報酬などは現状でどのようなっているのでしょうか。これから述べていきたいと思います。
オンライン診療=毎年変わるもの
まずはオンライン在宅診療の適応について述べたいと思いますが、前提として
オンライン診療ガイドラインは毎年改定されることになっている
というのがとても重要であると思います。
つまり、現状では診療スタイルに合致しておらず、また導入コストや診療報酬の面から手を出せないでいる先生方にとっても、今後の変更如何によっては一気に利用しやすいツールに変化する可能性があるのです。
さらに、高齢者の方々はICTリテラシーが十分でない場合があることから、早い段階から時間をかけてオンライン診療を導入し、患者さん側が十分に使いこなせるような準備をしておき、
いざ先生側にとって診療ツールとして有用になったタイミングでタイムラグなく利用開始できるような環境づくりというのも、ひとつ検討の余地があるのではないかと考えています。
適応は顔なじみの患者さんに限られる
さて、ここからは今年の2月に新設された「オンライン在宅管理料」の具体的な適応について述べていきたいと思います。
まず、前提として、オンライン在宅管理料は
在宅時医学総合管理料を算定し、月に1回のみ訪問している患者さんに追加で100点を算定できる管理料であることが挙げられます。
(在宅時医学総合管理料について詳しくはこちらをご覧ください)
そして、その算定基準は
① 月1回の訪問診療に加える形で、当該月の別日に2回目として情報通信機器を用いてリアルタイムで診療を行うこと。ただし連続する3か月は算定出来ない
② 在宅時医学総合管理料を始めて算定してから6か月、毎月同一医師により対面診察されていること
(参考:m3.com)
が挙げられます。
(日経メディカルより著者改変)
つまり現状では
「顔なじみになった患者さんは、念のための追加診療を月1回オンラインで行っても良いよ」
あるいは
「顔なじみになった患者さんで、月1回だけは少し不安だけど、月2回訪問するのは多いと思うなら、2回目をオンラインですると良いよ」
というような位置づけであると、個人的には解釈しています。
「3か月に200点」以上はオンライン在宅診療での算定が存在しない
現在のガイドライン上は、オンライン在宅管理料で「3か月に200点」を算定する以外に診療報酬を受けるやり方はありません。
算定の条件が比較的厳しいことも相まって、なかなかクリニックでの導入が進まない状況となっていることは仕方がないのかもしれません。
個人的には、オンライン在宅診療の一番良い適応は、患者さんに不測の事態が起きた時の「臨時往診」にあると思っています。
在宅医療ではどうしても、臨時の電話を受けてから医療者が自宅に到着するまでにタイムラグが発生してしまいますが、このラグをオンライン診療で完璧にではないにしろ、埋めることができるかもしれません。
もちろん、現状でもオンラインで臨時の状態確認を行うことは可能ですが、やはり診療報酬が有るのと無いのとでは浸透具合に差が出てしまうのは仕方がないのかもしれません。
今後は
「緊急オンライン往診加算」
や
「深夜オンライン往診加算」
の出現に期待したいと思います。
【私見】オンライン診療の導入で起きること
さて、最後となりましたが、オンライン在宅診療が導入されることで、それに関わる人たちにどのような行動変化や感情の変化が起きるのか、自分なりに想像してみました。
① 月1回の訪問+2回目をオンライン診療として新たに追加する場合
a. 患者さん目線
・1割負担の患者さんの場合、月額100円の増額でオンライン診療が一回加わり安心感を得ることが出来る。(厳密には3か月で200円)
・ただし、メディア機器を新たに使うことに対する精神的障壁はそれなりに高くなると思われる。
b. 医療者目線
・月1回の訪問診療のみではやや不安だったが、月2回の訪問は過剰であろうon the fenceな患者さんに、オンラインという効率の良い形で介入することが出来る。
・オンライン診療を行い、具合の悪そうな場合には臨時往診という形でフォローアップを充実させることができる。
・(現状、診療報酬が設定されていないが) 臨時対応の際に、音声だけでなく視覚的情報を加えることが出来る。
c. 経営者目線
・増収はほとんど見込めない。
・ただし、今後「緊急オンライン往診加算」や「深夜オンライン往診加算」などの算定が更新されていく可能性は0ではないと考えられる。
・患者さんのICTリテラシーを育んでおき、可能な診療が増えてきたタイミングで迅速に反応するための下地作りを行うことになる。
② 月2回行っていた訪問診療の1回分をオンライン診療で代替する場合
a. 患者さん目線
・対面で行っていた診療がオンラインに変化することへの不安感が生まれる可能性がある。
・実費負担の面では-2133点となり月額2133円(1割負担の場合)の負担減となる。
・不安感のサポートと、金額的には負担軽減することの説明を双方向に行う必要がありそう。
b. 医療者目線
・漫然と月2回訪問診療していた患者の診療密度をtaperingしていく際に使える可能性がある。
・将来的に月1回に診療回数を減らす計画であるとしても、オンライン診療を行い、ワンクッション挟んで回数を減らしていくということが可能になる。
・1回分の移動時間が稼げるのでその分を、他の患者さんの診療時間や自己研鑽に利用することが出来る。
c. 経営者目線
・上記同様、現時点では直接的な増収は見込めない。
・ただし訪問診療の1回をオンラインで代替した場合に、医師が外回りをしている時間が減り、新規患者さんを受け入れる時間的余裕が生まれるため、間接的に増収が見込める可能性はある。
・ただし、医師が主治医として適切な診療を行える範疇を超えて患者さんの数を増やすべきではない。
(1人の医師が対応出来る患者さんの限界数は80人程度と言われている)
さて長々と私見を述べましたが、あくまでもこれは私見に過ぎないので、参考程度に読んでいただけると幸いです。
まとめ
オンライン在宅医療は現在、完全なる黎明期にあり、今後の改善が期待されるところです。
うまく改善が進めば、医療者側の負担を減らしつつ患者さんに提供される医療の質を高めることが出来るかもしれません。
現状の不便・不都合に不貞腐れず、今後も情報のキャッチアップを継続して行い、適切なタイミングを逃さず適切なやり方でオンライン在宅診療を行っていきたいものですね。
また、この他にも、在宅医療に関わる情報を発信していますので、合わせてご覧ください
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川良健二