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今日は訪問診療を行ううえで、必要となる医師側の基準や資格についてまとめてみたいと思います。
特定の専門医を持っている必要があるのか、あるいは専門医を持っている必要があるのかについて述べていきたいと思います。
【結論】訪問診療に必須となる資格や専門医は特にない
いきなりですが、訪問診療を行うえで必須となる資格はありません。
言い換えれば、最低でも初期臨床研修を終えていれば、適切な医療を提供し、適切な患者間コミュニケーションが実践できることを条件に、訪問診療を行うことは可能です。
現在開業されているどんな先生方であっても、患者さんに最良の医療を提供できるのであれば、すぐにでも外来診療に加える形で訪問診療を行うことが可能です。
しかし、もちろんこれは誰にでも出来るということでは、全くありません。
在宅医療においては、常に患者さんのご家族と密に関わり、また多種多様な医療職の方たちとも密接なコミュニケーションを行ないながら、”地域で患者を救う”という概念が必要となってきます。
特定の条件を除いては ”出来高制” の診療報酬体系をとる在宅医療においては、患者さんの自己負担を出来る限り抑えながら、社会福祉資源を上手に利用し最良の医療・介護を提供することが求められ、
これには訪問看護師やケアマネージャーを始めとした医療職との密接な関わり合いが必須条件となります。
また在宅医療を行う上で避けて通れない、とても大切な項目として終末期医療が挙げられるでしょう。
在宅においても、緩和ケアを目的とした麻薬の使用は認められており、これらの扱いには慣れておかなければなりません。
また患者さまがお亡くなりになった際にはご自宅で “お看取り” をすることも、在宅医にとっての非常に大事な役割のうちの一つであり、こうした医療については十分に勉強することが望まれます。
在宅医療には専門医がある
さて、上記に述べたようなことを学ぶためにはどうしたら良いでしょうか。
もちろん下記にお示しするような、在宅医療の教科書というのは少なからず存在しています。
このような市販の参考書を使って勉強することは、初学者にとっては非常に門を叩きやすく当然おすすめできます。
この文章を書いている私も、上記の本を熟読し在宅医療の初めの一歩を踏み出したといっても過言ではありません。
しかしながら、いざ実践の場において出来るだけ自信を持って診療にあたるためには、やはり専門医の取得が推奨されることでしょう。
日本在宅医学会は在宅医療専門医の取得基準を下記のように定めています。
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以下の条件を満たすものは、在宅研修施設での一年間以上の研修プログラムを受け、専門医試験を受験することができる。
(1) 在宅医療研修プログラム終了時に医師として5年の経験があること
(2) 一年間以上の在宅医療研修プログラムを行う場合、以下の2つ研修条件を必要とする。
a) 半年間以上の内科での研修を修了していること
卒後臨床研修修了者は、卒後臨床研修の内科研修をこれにかえることができる。
内科研修については、総合内科、老年内科での研修が望ましい。
b) 緩和ケア研修(3か月相当)
緩和ケア研修については、緩和ケア病棟、あるいは緩和ケアチームでの研修が望ましい。
ただし、年間の在宅看取りが10名以上の在宅研修施設での研修においては、緩和ケア研修を免除することができる。
(ただし、在宅医療研修プログラムの中にこれらの研修を組み込んでもかまわない。)
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(参照:制度全体の解説)
つまり、最短の場合には1年のプログラムで在宅専門医の取得が可能ですが、これまでに一度も内科研修を行っていない先生方にとっては、在宅専門医研修の中に内科研修を組み込む必要があり、1年では取得できない場合が含まれます。
在宅医療専門医は今後単独で取得できなくなる?
現在においては在宅医療専門医を取得するのに前提となる「基礎学会」は原則設けられておりませんが(つまり単独で取得可能と考えられますが)、今後2020年を境に、在宅医療専門医を取得するのには別の専門医が必要となる可能性が学会ホームページに掲載されています。
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本制度は、基本的に家庭医療や内科の後期研修の修了者を対象にしたフェローシップとして位置付けられています。
しかし、多くの専門医制度や後期研修制度との関係が整理されて、全体の枠組みの中でフェローシップとして位置付けるには時間を要すると考えています。
このような観点から、基礎学会の取得は2020年までは免除されることになりました。
(今後在宅医療専門医取得の前提条件となりうる)基礎学会としては、家庭医療学会後期研修プログラム修了者、プライマリケア学会認定医、 内科認定医、専門医が挙げられています。
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(専門医制度Q&A より一部抜粋・改変)
現在、在宅医療に領域においては、1年間という短期間でエッセンスを学ぶことが出来たり、また基礎学会を必要としない単独取得が可能であるなど、門戸は比較的広く開かれている印象ですが、今後基礎学会の取得が必要となりそうであるなど、その動向からは目が離せません。
しかし、いずれにせよ、在宅医療を実践するものとしては、冒頭でも述べたような地域医療・終末期医療の経験は必須であり、さらに言うなれば、今後も増え続ける高齢者を支える医療として、在宅医療は国にとって必須の領域となるでしょう。
これまでのように急性期病院中心の医療で国を支えようとすれば破綻してしまうことは目に見えて明らかです。
すべての人には、望む場所・望む形で医療が提供されなければなりませんし、また各人の最期の時についても、望む場所・望む形で迎えることが出来るよう、医療を整備しなければなりません。
そのために在宅医療が手助け出来ること、これを探し続ける必要があるでしょう。
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川良健二