AKI(INTENSIVIST VOL.1NO.3)の重要項目まとめ

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目次

1. 【病態】
2. 【検査・診断】
3. 【評価】
4. 【治療】
5. 【栄養管理】

 

 

 

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INTENSIVIST 重要項目まとめ

 

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【AKIの病態】

腎前性:腎灌流量・圧の異常に伴う(院外発生で一番多い)
腎性 :腎実質の障害に伴う(院内発生で一番多い)
腎後性:尿路閉塞などに伴う

[腎前性]
・体液量の減少や心拍出量の減少、低血圧などの原因でGFRが低下する。
・体液量が減少すると、尿細管での再吸収を増やして対応しようとするが、それでも追いつかない場合に、糸球体濾過量自体を減らしてしまうことからAKIに至る。
・通常MAP>65mmHgであれば腎灌流量が保たれるが、高血圧性の動脈硬化が強い場合には100mmHg以上でもGFRが低下することが知られている
・腎実質の器質的障害を伴わない
・Crの上昇は軽度にとどまり、BUN/Cr比の上昇(15以上)が認められる
・エコーでは腎皮質のエコー輝度低下(皮質浮腫)の所見

[腎性]
・血管炎
・(感染後)急性糸球体腎炎
・(薬剤性・感染性)間質性腎炎
・急性尿細管障害・壊死(腎前性AKIに伴って連続的に尿細管障害が出現する)
・エコー輝度の上昇が時間のたった腎性AKIや薬剤性AKIを示唆する。

[腎後性]
・AKIを見たらまずエコーで水腎症の有無を確認。腎後性AKIはまず最初に確認すべき
・ただし、上部尿路閉塞でAKIに至るのは、両側or片側+対側に腎障害ありのパターン

[septic AKI]
・従来、敗血症に伴う血圧低下→血管収縮→腎灌流の低下→尿細管壊死が主病態であると考えられ、ノルアドレナリンによる腎障害が懸念されてきたが、実際の病態としては腎灌流はむしろ増えている可能性がある。

・septicAKIの病態としては、輸出細動脈の高度拡張に伴う糸球体内圧の低下がメインである可能性がある。

・ノルアドレナリンは、昇圧により腎灌流を増やす目的ではなく、輸出細動脈を直接収縮させる目的があるのではないか。

・同様の理由で、RAS阻害薬は輸出細動脈を拡張させることからAKIのリスクファクターとなる。

・大量輸液をモットーとしたEGDTは近年有害であることが示され、変わりにSSCGのcare bundleを指標にするのが良い
(2019/2/19訂正)
・入院日数を長くし、コストを高めるが専門家のusual care群と比べて死亡率に有意差はなかった。


http://www.marianna-u.ac.jp/dbps_data/_material_/ikyoku/20170516Endo.pdf

 

・集中治療の現場では出血性ショックやsepsisによる腎前性AKIが多くを占めると思われるが、腎炎や薬剤性間質性腎炎なども一定の割合でみられることから、腎臓内科医へのコンサルテーションをためらってはならない。
(米国では腎臓専門医へのコンサルテーションが予後改善因子という報告がある)

 

 

 

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【AKIの検査・診断】

[診断基準と重症度分類]
RIFLE criteria, AKIN ctiteriaの二つが紹介されているが、下記に新しい基準KDIGOを示す(あまり変わっていない)

(https://www.nagoya2.jrc.or.jp/content/uploads/2018/01/7e9a8f666a5e58faf46e713d713d8d0c.pdf)

 

[病歴と身体所見]
・腎前性・腎性・腎後性の分類に沿って、鑑別を進めるのが分かりやすい

・脈拍上昇、起立性低血圧、絶対的低血圧は循環血液量減少のサインとして腎前性AKI・虚血性腎性AKIの重要な所見である。(血圧は平時と比較することが大事)

・身体所見では、循環血液量減少の指標として
① 口腔粘膜の乾燥(感度85%)
→湿潤であれば、減少していない可能性が高い

② 腋窩の乾燥(特異度82%)
→乾燥していれば減少している可能性が高い

③ CRT時間の延長(特異度95%)
→中指爪を5秒圧迫、成人では2-3秒/高齢者では4秒以内
→延長あれば減少している可能性がかなり高い

 

・典型的なシナリオを頭に入れておく
① 高齢+貧血 →骨髄腫腎、アミロイドーシス

② 骨粗しょう症(VitD、Ca製剤)+NSAIDs+高齢
→高カルシウム血症、NSAIDs腎症

③ 代謝性アシドーシスがらみ→sepsis
など

 

[検査]

(https://www.nagoya2.jrc.or.jp/content/uploads/2018/01/7e9a8f666a5e58faf46e713d713d8d0c.pdf)

・ただし、これらマーカーによる鑑別の感度、特異度は高くない。

・利尿剤使用下でFENaは使用不可

・尿沈渣円柱の種類と疾患
① 顆粒:非特異的、尿細管障害
② 赤血球:糸球体腎炎
③ 白血球:間質性腎炎、腎盂腎炎、糸球体腎炎
④ 脂肪円柱:ネフローゼ、薬剤性尿細管障害

・AKIのバイオマーカー
早期診断に有用であるばかりでなく予後予測にも使える可能性がある。

バイオマーカーは、
・超急性期(侵襲から2-4hr):尿中NGAL、L-FABP
・急性期(6-12hr):尿中KIM-1、IL-18
・急性期(24-48hr):血清cistatinC
と診断が得意な時期が異なる。

cistatinCの上昇は腎代替療法の必要性やAKI関連死との相関が報告されている。

 

 

 

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【AKIの評価】

[初期動作]
・最初にやるべきは、緊急透析が必要かどうかの評価。
・それが終わったら、エコーと検尿で分類の当たりを付ける
・腎の萎縮をみたらCKDに合併したAKIを疑え
・腎前性・腎後性では尿所見は正常であることが多い
・腎性AKIでは尿所見(尿比重、円柱)だけで治療効果判定が出来る場合が多い。

[Creの位置づけ]
・診断に血清Creが必須ではあるものの、それは病勢を表すものではない。
・AKIの発症初期はCreの上昇がない場合がある
・逆に、治療が奏功し腎機能が改善している場合でもCreが上昇を続ける場合がある。
・透析導入された場合、もはやCreは腎機能の指標とならない。筋量や栄養によっても左右される
・全身状態、尿量、検査所見などを鑑み総合的に判断する必要がある。
・血圧が正常でも、動脈硬化が強い高齢者やsepsisで輸入細動脈の機能的収縮が起こっている際、CKDの際など、AKIは発症しうる。RAS投与患者にも注意。

 

 

 

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【AKIの治療】
・無尿の患者に対して、「脱水」として過剰な輸液をしてはならない。
・治療でまず最初に行うべきことは
 ・高度尿毒症
 ・高カリウム血症
 ・代謝性アシドーシス
などへの緊急対応。

・それらの後に診断プロセスに進み、腎後性・腎炎などを否定すれば、残った診断として腎前性・腎性があり、それに対する治療は

① 体液量の維持
② 血圧の維持
③ 腎毒性物質の中止や回避

である。

 

[体液量の維持]
・CVP 8-12mmHgが目安
・MAP65mmHgが目安(ただし、動脈硬化が進んでいると予想される場合80mmHgを目指す)

 

[どの輸液製剤を用いるべきか]
・重症でない場合には晶質液でよい(生食やリンゲル液)
・重症の場合(septic AKIが多い)の輸液製剤
→アルブミンVS晶質液
→主要評価項目の28日全死亡率は有意差がなく(20.8% vs 20.8%; RR 0.99; 95%CI 0.91-1.09; p=0.87),不全臓器数,ICU在室期間,入院期間,人工呼吸器装着期間,腎代替療法期間に有意差はみられなかった.(2004年SAFE study)

→アルブミンの併用は平均血圧を上昇させ,心拍数を改善させ,循環作動薬・強心薬の使用期間を短縮し,初期7日間の体液バランスが有意に低いが,28日および90日死亡率に有意差はなかった.ただし,敗血症性ショックに限定したサブ解析ではアルブミン併用群の方が有意に死亡率が低かった.(2014年ALBIOS study)

 

[血圧の維持]
・昇圧剤はノルアドレナリンの腎保護作用がドパミンに勝る。
・ノルアドレナリンで昇圧が難しい時はバソプレシンの投与を検討する。


https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/161025.pdf

 

[尿量の維持]
・以前は乏尿性AKIの予後が非乏尿性と比べ悪いと考えられていたが、今は尿量を増加させることの意義は明確ではない。
・尿量と糸球体濾過機能や尿細管機能は比例関係にない
・フロセミドによって尿量を増やしても腎・生命予後は改善されない。逆に悪化させる可能性ある
・腎機能障害腎機能障害を有する急性心不全患者に対して,利尿薬療法に低用量ドパミン
を使用しても72 時間累積尿量を変化させなかった。(ROSE試験)

・summary
乏尿でAKIの確立した患者では,利尿薬をAKIの治療を期待して使用すべきではない。利尿薬はボリュームコントロールのための短期使用は許容されるが,この使用で透析の開始を遅らせるべきではない。
UpToDate ”Nonoliguric versus oliguric acute kidney injury”

・集中治療領域における利尿薬の使用はvolume-overloadが合併した場合のみ行い、AKIや乏尿そのものに対しては行わない。

 

[フロセミド投与の実際]
・GFRに応じて通常量の2~5倍を投与する。
・即効性のあるフロセミドが使用されることが多い。
・経静脈投与が望ましい。
・慣習的に20 mgくらいから開始し,反応不良であれば40 mg,80 mgと倍量に増量していくことが多い。
・透析の適応などを判断しなければならないときは,はじめから100 mg,200 mgを使用して構わない。
・高濃度フロセミド投与では,聴力障害の副作用が起こりうる。
急速投与で起きやすい。
投与時間を数分以上,できれば30分くらいとるのが望ましい。
・200mgでも反応がない場合には、緊急透析を考慮する
田中竜馬 編「集中治療999の謎」メディカル・サイエンス・インターナショナル

 

[AKIと血液浄化療法]
① 開始基準
敗血症に対する大量補液のエビデンスに伴うhypervolemiaや、肺保護的換気による高炭酸血症の容認に伴うアシドーシスの進行、潜在的副腎不全に対するステロイド投与のエビデンス(ADRENAL)
などから、より早期の血液透析が検討される機会が多くなっている。


https://www.nagoya2.jrc.or.jp/content/uploads/2018/01/7e9a8f666a5e58faf46e713d713d8d0c.pdf

追記:ただし、最近の論文データによれば、腎代替療法のearly/late導入で予後に差がないことが分かっている。


http://www.marianna-u.ac.jp/dbps_data/_material_/ikyoku/20160614Nagai.pdf

 

 

 

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【AKIと栄養管理】
・AKIの患者においては、protein-energy wastingの状態にあり、貯蔵タンパクやエネルギーが減少している。
・AKIのうち42%がPEWの状態にあり、栄養障害はsepsis, 出血, 心原性ショックなどの合併症の確率が有意に高く、また入院期間も延長する。

 

[AKIと血糖値]
・AKIを合併した重症患者で認められる高血糖、インスリン抵抗性は死亡率の上昇と関連があると言われている。
・しかしintensive insulin therapy(BS 81-108mg/dl)を行うことによってICUでは90日死亡率が高くなる。血液培養陽性でみる易感染性については有意差なし(2009年NICE-SUGAR試験)
・ICUにおける血糖管理については下記


http://www.jseptic.com/journal/108.pdf

 

[必要カロリーとタンパク質]
非タンパク投与カロリーは25-30kcal/kg/day
タンパク投与量は1.5g/kg/day, 腎代替療法の実施時には1.5-2.0g/kg/dayを投与
(ただしCKDの患者に対してタンパク制限を実施する点に留意)

[電解質の盲点]
・ルーティンで測らないCa, Mg, Pに留意
・低Mg
原因:腎・消化管からの喪失、摂取不足などが原因。
症状:筋・心臓・神経症状低、低Ca、低K、低Pの原因となる
心房細動など不整脈の原因にも。ICUのAFにMgを投与したら77%で洞調律化

・低P
原因:細胞内再分布(カテコラミン・インスリン投与)や腎・消化管からの喪失
症状:ICU患者の28.8%にみられ、心筋収縮・呼吸筋収縮に関わる。
急激な栄養負荷に伴うrefeeding syndromeに注意
1.0mg/dl以下を目安に治療を開始する。

・低Ca
原因:sepsis, 輸血、低Mg、腎不全
症状:神経・心血管(低血圧、拍出量低下)
ただしsepsis, 虚血の患者にはCa投与では細胞障害が進むので無症候性であれば
補正はしない

 

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