タイトル
“Single-Dose Nirsevimab for Prevention of RSV in Preterm Infants.”
Griffin, M. Pamela, et al. New England Journal of Medicine 383.5 (2020): 415-425.
原文はこちら
論文を一言でまとめると
既往のない早産児に対するニルセビマブの単回筋肉内注射により、
RSウイルスによる受診と入院が減った。
※ニルセビマブ:ワンシーズンに1回の投与に向け設計した、RSウイルスに対するモノクローナル抗体
Methods
[場所/施設]
23か国164か所(アメリカ、ヨーロッパ、ブラジルなど)
[Patients]
早産(在胎週数29週0日〜34週6日)で出生した、最初のRSV流行シーズンにさしかかる、1歳以下の児
[Intervention]
50mgのニルセビマブを筋肉内注射した
[Comparison]
同量のプラセボ(生理食塩水)を筋肉内注射した
[Outcome]
投与後150日間のRSVによる下気道感染症による受診・入院
[デザイン]
多施設共同プラセボ対象二重盲検ランダム化比較試験(a randomised, double-blind, placebo-controlled, multicenter trial)
結果まとめ
・2016/11/3~2017/12/1の期間に1453人がランダム化の対象となり、介入群969人とプラセボ群484人と2:1に割り振られた。
・参加者の平均在胎週数は32.7週、平均月齢は3.3か月だった。
・RSV関連下気道感染症は介入群で2.6%(25/969人)、プラセボ群で9.5%(46/484人)であり、介入群が優位に低かった(p<0.001)。(Relative Risk Reduction 70.1%[95%CI;52.3%~81.2%])
・入院は介入群で0.8%(8/969人)、プラセボ群で4.1%(20/484人)であり、介入群が優位に低かった(p<0.001)。(Relative Risk Reduction 78.4%[95%CI;51.9%~90.3%])
・重大な有害事象は介入群で11.2%(108/969人)とプラセボ群で16.9%(81/484人)であり、治験薬に関連するものはないと考えられた。
・この研究から著者らは、リスクの高い児を除いて、健康な早産児に対してニルセビマブの投与を考慮すべき、と結論付けた。
[Limitation]
・今回の結果と他の抗RSV抗体や母体ワクチンに関しての結果の直接比較は困難であった。
読んだ感想
資金提供がアストラゼネカのため、検出力を99%に設定しているのが、n数を増やしたいためなのかと邪推してしまいました。検出力99%(通常は80-90%)でサンプルサイズを計算している論文はこれが初めてだったのですが、製薬会社の論文ではよくやられているのでしょうか?分かる人教えてください。
現在の主流である月に1回投与のシナジスと、このワンシーズン1回の投与のニルセビマブとの直接の比較研究が見れると臨床医としては良いなぁと思いました。
非劣性が証明できれば、それだけでワンシーズンのニルセビマブをみんなが接種するようになると思います。