タイトル
“Ambulatory management of childhood asthma using a novel self-management application.”
Nkoy, Flory L., et al. Pediatrics 143.6 (2019).
原文はこちら
論文を一言でまとめると
アメリカのウタ州の11個の小児科クリニックにおいて、
モバイルアプリを用いて喘息の自己管理を促したところ、
介入後、3-12ヶ月での児のQOLが改善し、
救急外来や病院への受診や、臨時での吸入薬の頻度などが減少した。
Methods
[場所/施設]
アメリカのウタ州の11個の小児科クリニック
[Patients]
症状の続いている喘息のために直近1年間に該当クリニックを受診していた、2-17歳の児。そのうち、英語で会話ができ、インターネットを使用できる方。
[Intervention]
AsthmaTrackerの電子版を用いて、喘息の自己管理を促す
[Comparison]
治療前 or Matched Control との比較
[Outcome]
介入後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月で測定した、患児のQOL
(Integrated Therapeutics Group Child Asthma Short Formを利用)
[デザイン]
前向きのMatched Cohort研究
※アプリによる介入について
[e-Asthma Trackerの機能]
①7日間記録がないと連絡
②リアルタイムの症状のグラフ化
③lowスコアの時にアラート
④赤・黄・青でスコア毎に、対応を提示
[今回の研究で追加されたこと]
①アラートがクリニックにも届き、それに対して喘息の管理・治療の調節
②4回入力すると10ドルのギフト券
③管理状況の良いTop 5ユーザーの公表
結果まとめ
・対象の特徴は、性別は女性が40%、人種は白色人種が76%、年齢の平均(± SD)は7.9歳 (±4.0歳)であり、12ヶ月後もフォローできたのは65%程度であった。
・児のQOLは、ベースラインが79.1、3ヶ月後で90.0、6ヶ月後で90.0、12ヶ月後で90.6と、3ヶ月後から有意 (P < 0.001)に改善を認めた。
・e-Asthma Trackerで測定されたAsthmaスコアは、ベースラインで18.8、第1四半期で22.3、第2四半期で22.8、第3四半期で22.8、第4四半期で22.9であり、第1四半期から有意(P < 0.001)に改善を認めた。
・アプリを用いた介入群(N = 325)では、同時期のMatchedコントロール(N = 603)と比較して、救急外来や病院受診をするRisk ratio 0.41 (95% CI 0.22-0.75)であり、臨時の吸入薬の使用のRisk ratio 0.65 (95% CI 0.46-0.93)と、いずれも有意に回数の減少を認めた。
・以上より筆者らは、モバイルアプリによる喘息の自己管理への参加により、喘息のコントロールが改善される可能性がある、と述べた。
[Limitation]
・当初は「クラスターランダム化比較試験」を計画したが、コントロール群がアプリを使用できないことで反対にあい、実施できなかったこと。
・そのため、コントロール群のQOLなどのデータがないこと。
次郎作の感想
これまでいくつか読んだアレルギー疾患などの慢性疾患の管理に「モバイルアプリ」を導入した論文の中では、一番しっかり結果が出ている論文かもしれません。
QOLに関しては治療の前後での改善を見ているだけで、Matchedコントロールとは救急外来への受診回数などしか比較できていなかったのは少し残念でしたが、limitationで書いてあるようにランダム化比較試験は倫理的な問題がはらむんだなと再認識しました。
あと、「ちゃんとアプリを使ったら月10ドルもらえる」って、これだけでフォローできる率も上がるだろうし、治療のアドヒアランス上がって症状改善した、とかもあり得るのではないかな、と思いました。この研究は太っ腹ですね。