イタリアのCOVID-19流行地における重症川崎病様症状の発生

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タイトル

“An outbreak of severe Kawasaki-like disease at the Italian epicentre of the SARS-CoV-2 epidemic: an observational cohort study.”

Verdoni, Lucio, et al. The Lancet (2020).

原文はこちら

※オープンアクセス の論文のため一部図表を原著から引用しています

論文を一言でまとめると

イタリアのCOVID-19の流行地にある小児の三次病院で、

川崎病の患者数は、コロナ流行前(2015/1/1-2020/2/17)は62ヶ月で19症例だったが、

コロナ流行後(2020/2/18-4/20)は2ヶ月で10症例と明らかに増加したようにみえ、重症例も多かった。

Methods

[場所/施設]

イタリアのベルガモにある”Papa Giovanni XXIII”という小児の三次病院の単施設

(年間1200人の入院、小児の各専門科が揃っている)

[デザイン]

単施設による後ろ向きの観察コホート研究

[Patients]

・2015年1月1日から2020年の4月20日の間に、上記病院で川崎病と診断され入院治療を行った児

・COVID-19の流行前と流行後として以下の2つの群に分けた。

Group1:2015年1月1日〜2020年2月17日に診断された川崎病患者

Group2:2020年2月18日〜2020年4月20日に診断された川崎病患者

[Outcome]

・川崎病の発生率や、重症例の割合

※診断基準

川崎病:アメリカ心臓学会の基準の定型川崎病(川崎病症状の6症状のうち5症状以上が揃う)と非定型川崎病(川崎病症状の3-4症状が揃い、その他の検査所見がある)。詳細はガイドラインへ

Kawasaki disease shock syndrome(川崎病ショック症候群):低血圧or収縮期血圧がベースの20%低下or末梢循環不全の徴候がある

macrophage activation syndrome(マクロファージ活性化症候群):小児リウマチ国際試験機関の基準による

結果まとめ

・2020年2月18日〜2020年4月20日に診断された川崎病(Group2)は10例で平均年齢は7.5歳、そのうち5例が定型川崎病であり5例が非定型川崎病であった。非定型の川崎病のうち2例は左冠動脈瘤(>4mm)を認め、1例で心嚢水貯留を認めた。

・Group2の川崎病の10例のうち、5例が川崎病ショック症候群の基準を満たし、5例がマクロファージ活性化症候群の基準を満たした。

・2015年1月1日〜2020年2月17日までに診断された川崎病(Group1)は19例で平均年齢は3.0歳、そのうち13例が定型川崎病、6例が非定型川崎病であった。川崎病ショック症候群やマクロファージ活性化症候群の基準を満たす例は1例もいなかった。

[原著より引用]

・川崎病の患者数は、2015/1/1-2020/2/17で19例、2020/2/18-2020/4/20で10例であった。

次郎作の感想

・個人的には、①元々言われていたようにやはり感染が川崎病のトリガーで今回もCOVID-19がトリガーとなった、②COVID-19により血管炎が引き起こされて偶然川崎病の症状に似ていた、のどちらかかなぁと思います。

・COVID-19の流行地の小児病院からこのようなデータが出るのはとても良いと思うのですが、Group2は2020/2/18-4/20の2ヶ月で10例だからincidnceは5cases/monthだと思うんですが・・・。FigureBにあるように、偶然症例が1ヶ月間の間にまとまったから10cases/monthにしたんですかね。ちょっと恣意的な気がしました。なので結果は論文の数字をそのまま書かず、事実だけを書いています。

・最後に、小児科医としてはイタリアでの川崎病の治療方針を知れたのは地味に面白かった。RAISEスタディに則ってるんですね。

以下、原著より引用

“All patients were administered intravenous immunoglobulin at 2 g/kg. According to the RAISE study,20 based on risk stratification, patients were also treated with aspirin at 50–80 mg/kg per day (Kobayashi score <5) for 5 days or aspirin at 30 mg/kg per day plus methylprednisolone at 2 mg/kg per day for 5 days (Kobayashi score ≥5), followed by a tapering of methyl- prednisolone over 2 weeks. Aspirin was maintained until 48 h after defervescence, and then continued at an antiplatelet dose of 3–5 mg/kg per day for 8 weeks.”

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