【速報】COVID-19に対するレムデシビルの効果

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タイトル

“Remdesivir for the Treatment of Covid-19 — Preliminary Report”

J.H. Beigel, Tomashek,et al. New England Journal of Medicine (2020).

原文はこちら

※オープンアクセス の論文のため一部図表を原著から引用しています

論文を一言でまとめると

アメリカ中心に世界各国の60施設で行われたRCTで、

COVID-19の診断確定症例に対して、レムデシビルの10日間の投与を行うと、

有意に、症状回復までの時間が短縮し、治療開始後15日目での症状が改善することが分かった。

Methods

[場所/施設]

世界の13ヵ国の60施設

(アメリカ45、デンマーク8、イギリス5、ギリシャ4、ドイツ3、韓国2、メキシコ2、スペイン2、日本1、シンガポール1、の合計60施設)

[Patients]

2020年2月21日から4月19日までにRT-PCRでCOVID-19と診断された患者

[Intervention]

レムデシビルを経静脈的に初日200mg/day、以降9日間100mg/dayの計10日間投与する

[Comparison]

プラセボを10日間投与

[Outcome]

「退院できる」or「酸素投与・医療的処置が不要になる」までの、症状回復までの時間

(正確には、臨床症状を8段階のスコアで評価し、スコア3以下になるまでの時間)

症状は以下のように8段階のスコアで評価された。

  1. 入院しておらず活動制限なし
  2. 入院していないが、活動制限か酸素投与のいずれかはある
  3. 入院しているが酸素も医療的なケアも不要(感染制御目的の入院継続)
  4. 入院しており医療的なケアは必要だが、酸素投与は不要
  5. 入院しており酸素投与が必要
  6. 入院しており、非侵襲的換気療法or高流量酸素療法が必要
  7. 入院しており、挿管管理orECMO管理が必要
  8. 死亡

[デザイン]

世界各国の多施設によるプラセボを用いた二重盲検ランダム化比較試験

※速報のため、4月27日の元々中間解析を行うタイミングでの解析結果

結果まとめ

・1063症例がランダム化割付の対象となり、541例がレミデシビル投与群、522例がプラセボ群に割り付けられた。

原著より引用

・対象となった症例の年齢の平均は58.9歳であり、64.3%が男性であった。79.8%が北アメリカから、15.3%がヨーロッパから、4.9%がアジアからの症例であり、発症からランダム化割付までの日数の中央値は9日(四分位範囲6-12日)であった。

・症状回復までの日数の中央値は、レムデシビル投与群で11日、プラセボ群で15日とレムデシビル投与群で有意に短かった(症状回復までのrate ritio 1,32[95%CI 1.12-1.55]; 1059patients)。

原著より引用

・また、治療開始から15日目での症状のスコアは、レムデシビル投与群の方がプラセボ群に比較して改善していた(odds ratio 1.50 [95%CI 1.18-1.91]; 884patients)

原著より引用

・死亡率はレムデシビル投与群の方が数字としては小さかったが、統計学的に有意なものではなかった(hazard ratio 0.75[95%CI 0.47-1.04]; 1059patients)

・重大な副作用は、レムデシビル投与群で114例(21.1%)、プラセボ群で141例(27.0%)で報告された。副作用の中で、投与群と対象群で明らかに発生率の異なるものはなかった。

[Limitation]

・RCTの途中で、COVID-19の症状が想定より長引くことからprimary outcomeを「Day15での症状スコアの改善」から「症状スコア1-3に回復するまでの時間」へ変更した。(しかし、元々のprimary outcome[Day15での症状軽快]でも有意差を持って症状改善を認めている)

・この論文は速報であり、4月27日時点の解析であることからまだ全ての患者でフォロー期間が終わっているわけではない。

[資金提供]

第一資金提供者:National Institute of Allergy and Infectious Diseases

その他:各国の政府(日本、メキシコ、デンマーク、シンガポール)

・韓国ではSeoul National University Hospitalから、イギリスで United Kingdom Medical Research Councilから、資金提供があった。

次郎作の感想

・速報ですが、なかなかしっかりした結果が出ました。

・前回、中国からのレムデシビルのRCTの論文を紹介したと思いますが(こちら)、limitationで述べた通り、サンプルサイズを確保する前に流行がおさまってしまって検出力が56%の研究だったんですよね(2回に1回、本当の差を見逃してしまう)。なので、デザイン・研究次第では治療の有意差が出そうだなと思っていましたが、本当に出ましたね。

・もちろん、この研究の最終的な解析結果や他の研究の結果も待つことになりますが、レムデシビルは症状改善までの時間の短縮、という治療効果はありそう、という印象で良いのかもしれませんね。

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