タイトル
“Telehealth to improve asthma control in pregnancy: a randomized controlled trial.”
Zairina, Elida, et al. Respirology 21.5 (2016): 867-874.
原文はこちら
論文を一言でまとめると
気管支喘息の既往のある妊婦を対象に施行したRCTを行ったところ、
モバイルアプリ等の遠隔医療を用いて喘息をコントロールすることで、
気管支喘息の症状やQOLが改善する可能性が示唆された。
Methods
[場所/施設]
オーストラリア、メルボルンにある2つの大きな産婦人科病院
[Patients]
英語で会話のできる、妊娠20週までの気管支喘息の既往のある18歳以上の妊婦
[Intervention]
1秒率(FEV1)を測定する機器や、喘息の症状や服薬状況を記録するアプリを用いて、自ら設定したアクションプランの遵守をサポートする
[Comparison]
通常の喘息対応
[Outcome]
3ヶ月と6ヶ月後の、Asthma Control Questionnaire-7 (ACQ-7)を用いた喘息のコントロールの評価
[デザイン]
2施設における単盲検(評価者のみ)のランダム化比較試験
結果まとめ
・対象となった患者の年齢の平均 (±SD)は31.4歳 (±4.5歳)であり、58%が喘息の中等度〜重症であり、妊娠週数では介入群と対象群で差はなかった。
・介入後6ヶ月での評価で、ACQ-7のスコアはmean difference -0.36 (95% CI -0.66~-0.07, P = 0.02)と介入群で有意に改善を認めた。
・また、mini-Asthma Quality-of-life Questionnaire (mAQLQ)という評価方法でも、介入群でmean difference 0.72 (95% CI 0.29-1.16, P = 0.002)と有意差を持って改善を認めた。
・介入後6ヶ月の時点での直近3ヶ月間のβ刺激薬の吸入は、介入群で1名、対象群で18名と、有意差を持って(P < 0.01)介入群で少なかった。
・また、3ヶ月時点での評価では、上記のACQ-7やmAQLQなどのスコアでも両群に差はなかった。
・出産や新生児に関するアウトカムでは両群に差はなかった。
・以上より筆者らは、当初設定した臨床的に意味のあるスコアの改善には届かなかったものの、モバイルアプリ等の遠隔医療の導入により妊婦での喘息のコントロールを改善できる可能性がある、と述べた。
[Limitation]
・介入の内容上、治療を受けた患者に盲検はできなかった。
次郎作の感想
最近、遠隔医療におけるエビデンスをたくさん読んでいるのですが、
この論文は珍しく”Respirology”というしっかりしたジャーナルに掲載されています。
しっかりした結果が出ないもの、企業が主体のバイアス入りまくりの論文、などなど遠隔医療のエビデンスは明らかに不足しています。
そんな中、この論文はMethodから結果の解釈までちゃんとしていて、今後引用されるいいエビデンスになるだろうな、という印象でした。
気になったのは、患者に盲検化できてない、かつ、ほぼ質問表での改善しか結果が出ていないことくらいですかね。質問表でのOutcomeの場合、簡単にバイアスが入ってしまうので・・・