物語の始まりはこちらから↓
第1話 エピローグ
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道路の幅が徐々に狭くなるのに比例して、傾斜が出てきたようだ。
―本当に山の登坂路を行ってるんだな
しかし意外にも5分ほど坂を登ったところで、すぐママは車を停めたのだった。
「さあやっと着いたわ。その先にレストランがあるの。テラス席で夜景も見えるんだから」
「今からレストランに行くんですか?夜景も見えるんですか?」
「そうよ、素敵でしょう?ここにあなたを連れてきてあげたかったの」
三人で横列になってしばらく道を歩き、一つの大きなカーブを曲がったところで、突然ぼくたちの目に、赤色と青色の光が差し込んだ。
「Night fever」そう書かれた看板には、どこかエジプトの壁画を思わせるような、不思議な模様が描かれている。
早速中に入っていくと、広い店内にはダーツマシーンなどが並べられ、台湾の若者たちが酒を呷りながら遊びに興じていた。
自家用車以外での移動手段では、辿り着きづらいと考えられるところが難点だが、市内の喧騒から離れた場所に、忽然とこんなお店があるとなれば、人気が出るのも頷けるだろう。
そしてぼくたちは、肌寒さはあるものの、景色の見えるテラスに席を取り、真夜中の食事を始めた。
―すごい、こんなところがあるなんて。悪い事件に巻き込まれた可能性は、ほとんどなさそうだな
―しかし…警戒心のバランスも難しいもんだ。疑いが過ぎると、申し訳なさと罪悪感しか生まれないな
折角これほど素敵な場所に連れてきてもらっているのに、心の中では、どこかその場を楽しめない気持ちが凝っていた
やはり、警戒しながらも誘いに着いていくということは、ひどく見返りの薄いバランスの上に成り立っている行為かに見えた。
その感情をして、「騙されなくても凶、騙されれば大凶だな」と内心秘かに感じたものだったが、ママの気立ての良さや、その友達のシャイながらも、英語で話しかけてきてくれる可愛らしさ、そして夜景など、気持ちの良いもの達が練り合わさって、次第に罪悪感などが霧消してゆくのに、それほど時間はかからなかった。
「さあ、いい加減、日本語と中国語を通訳するのも疲れたから、みんな英語で喋りましょう。Start !」
「わかりました、良いですよ」
ここからぼくたち3人は、英語で会話することになった。
「私はね、オーストラリアで英語留学していたことがあるの」
どうりでママの流暢な英語にもうなずける。
「わたし…英語あんまりわからないんです…」
それに対して、友達の英語はお世辞にも上手いとは言えなかったが、ママの少し強引な展開の持ち運びに、会話せざるを得なくなっていた。
「ぼくは、発音はすごく下手なんですけど、受験勉強のおかげで、単語をよく覚えているので助かっています」
「そうねぇ。単語なんて良いから、とにかくたくさん喋るのが大切よ。そうしないと上達しないと思うんだけど、どうかしら?」
「確かにそうかもしれないですね。でも日本語は同じ言葉でも沢山のニュアンスがあって、ぼくたちは直接表現することを避ける癖があるから、それを英語でも表現しようとして、結果何も発言できなくなるんだと思います」
「わたし、なんとなくわかる気がします…。ママみたいにおしゃべりになれないから」
気が付くとぼくたちは、英語学習について話していた。
続きます。
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