タイトル
“Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19—Preliminary Report.”
RECOVERY Collaborative Group. New England Journal of Medicine (2020).
原文はこちら
※オープンアクセスであり、図表を適宜原著から引用した
この論文を一言でまとめると
イギリスの176施設で行われた非盲検のRCTで、
COVID-19の感染により酸素投与以上の治療を必要としている入院患者に対して、
デキサメタゾン6mg/dayの10日間投与すると、
有意に死亡率が下がることがわかった。
Methods
[場所/施設]
新型コロナウイルスの治療薬を見つけるための大規模研究 ”RECOVERY Study”の一環として、イギリスの176施設で行われた
[Patients]
臨床的にCOVID-19感染を疑われたor検査でCOVID-19の診断を受けた入院中の患者
[Intervention]
経口or静注でデキサメタゾン6mg/dayを10日間(or退院まで)投与する
[Comparison]
通常の管理を行う
[Outcome]
ランダム化割付から28日後での死亡
[デザイン] 非盲検のランダム化比較試験
結果まとめ
・2020/3/19-6/8の期間に、2104名のデキサメタゾン投与群と4321名のコントロール群に割り振られた。研究対象となった患者の特徴としては、年齢は平均 66.1歳(±15.7歳)で、女性は36%であった。 また、糖尿病が24%、心疾患が27%、慢性肺疾患が21%などと、56%の患者が少なくとも1つの合併症を持っていた。 89%の患者が検査でCOVID-19の診断を受けており、0.4%が結果待ちであった。 治療としては、16%が人工呼吸器管理orECMOを受けており、60%が酸素投与を受けており、24%が治療を要していなかった。
・ランダム化割付の結果、コントロール群に比べデキサメタゾン投与群で平均1.1歳上になってしまっていたので、年齢による調節を追加して行った。
・死亡者数は、デキサメタゾン投与群 482/2104人(22.9%)、コントロール群 1110/4321人(25.7%)であり、デキサメタゾン投与群で有意に死亡率が低かった(rato ratio 0.83 [95% CI 0.75-0.93])
・ランダム化割付の時点で人工呼吸器治療を受けていた群ではコントロール群に比べて、特に死亡率が低かった(rate ratio 0.64 [95% CI 0.51-0.81])
・酸素投与を受けていた群に限ってもコントロール群と比べて死亡率は低かった(rate ratio 0.82 [95% CI 0.72-0.94])。また、酸素投与などの治療を受けていない群ではコントロール群と比較して死亡率の有意な低下は認めなかった。
・また、発症から7日以内での治療開始では死亡率改善の有意差が出なかった。
次郎作の感想
論文が発表される1ヶ月前くらいから騒がれていた研究ですが、かなりしっかりデータが出ましたね。
発症から7日以降の自己免疫の関与が強くなってくる時期の重症のCOVID-19患者にステロイドを使うのはコンセンサスが得られていくんだろうなと感じました。
死亡率を下げる薬剤のエビデンスが見つかったのはとてもすごいことで、何よりも製薬会社が大金をつぎ込んでくれないデキサメタゾンのような安価な薬の効果をしっかり論文化したイギリスのRECOVERY Studyはすごい価値のある研究だなと思いました。
日本でも、こういった有事の時にみんなが協力して立ち上がってエビデンスを創出する体制をぜひ作っていきたいものですね。