小児における多臓器炎症症候群(MIS-C)の特徴

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タイトル

“Multisystem inflammatory syndrome in US children and adolescents.”

Feldstein, Leora R., et al.  New England Journal of Medicine (2020).

原文はこちら

論文を一言でまとめると

アメリカの26施設で治療されたMIS-Cの患者186名のデータを集計すると、

発症年齢の中央値は8.3歳で、70%の患者がCOVID-19のPCR/抗体検査が陽性であり、COVID-19の発症から中央値で25日後にMIS-Cを発症し、ICU治療(80%)や人工呼吸器管理(20%)を要し、IVIg(77%)やステロイド投与(49%)で治療され、8%が冠動脈病変を合併することが分かった。

Methods

[場所/施設]

アメリカの”Overcoming COVID-19 study”に参加している38施設とその他15施設

[調査方法]

各施設の医師が下記のMIS-Cの定義を満たす患者のデータをカルテから抽出し、共通のフォームに入力する

[MIS-C(multisystem inflammatory syndrome in children)の定義]

・入院管理が必要

・21歳未満

・38℃以上の発熱 (または、24時間以内の発熱の報告)

・炎症を裏付ける検査所見

・PCR or 抗体検査で確認されたCOVID-19の感染、またはCOVID-19陽性者とのシックコンタクト

[調査項目]

年齢、性別、既往歴、COVID-19の検査結果、多臓器不全の症状/検査値、入院期間、治療内容、合併症、など

[デザイン]

多施設の患者のデータを用いた、ケースシリーズ

結果まとめ

・データ集計の結果、26施設の186名の患者がMIS-Cの定義を満たした。

・発症年齢の中央値は8.3歳 (四分位範囲 3.3-12.5歳)であり、115名(62%)が男性、135名(73%)が既往がなく、131名(70%)がPCRか抗体検査でCOVID-19陽性であった。

・発症時期は、COVID-19の症状が出てから中央値で25日後 (四分位範囲 6-51日後)であった。

・多臓器障害としては、消化器症状が171名(92%)、循環器症状が149名(80%)、血液学的な症状が142名(76%)、呼吸器症状が131名(70%)であり、4つ以上の臓器に症状が渡っている患者が131名(71%)であった。

・148名(80%)がICU管理を要し、37名(20%)が人工呼吸器管理を必要とし、90名(48%)が循環作動薬を使用し、最終的に4名(2%)が死亡した。死亡した4名のうち2名は既往のない小児であった。

・治療薬としては、144名(77%)でIVIgが使用され、91名(49%)で全身ステロイド投与が行われ、38名(20%)でIL-6阻害薬やIL-1RA阻害薬が使用された。

・川崎病症状を呈したのは74名(40%)であり、冠動脈瘤の形成を認めたのは15名(8%)であった。

[Limitation]

・比較対象のないケースシリーズであり、リスクファクターなどの解釈には注意を要する

次郎作の感想

COVID-19流行後にイギリスから出された「川崎病様の血管炎」の複数症例の報告により認知された全身性の血管炎ですが、小児領域で起こるものは「多臓器炎症症候群(MIS-C)」という名前で報告されることが多くなってきました。

個人的にびっくりしたのは、COVID-19の発症の25日後に発症するっていうところで、臨床の現場では意外とCOVID-19を原因として鑑別にあげるのは難しいのかもなと思いました。

MIS-Cに移行してしまう場合のCOVID-19としての症状とそうでないCOVID-19の症状では違いがあるのかという点が臨床的には気になりますね。

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